『ワイドナショー』に出演する森喜朗
東京五輪組織委かの森喜朗会長の女性差別発言をめぐっては、普段、権力忖度ばかり熱心で弱腰なワイドショーやコメンテーターたちもさすがに「ありえない」「五輪組織委の会長にふさわしくない」などと批判の声を上げている。
まあ、国内世論や国際社会からの予想以上の厳しい批判を知って、慌てて「乗り遅れてはならじ」と批判をはじめたのだろうが、しかし、これ、いまさら何を言っているのかという話だろう。そもそも、今回の女性差別発言以前から森が東京五輪組織委会長としての適性を著しく欠いていることは明らかだった。女性差別はもちろん、ほかにも眉をひそめるような暴言を繰り返し、東京五輪をめぐるさまざまなトラブルの元凶となってきた。
誘致をめぐる買収疑惑では、自らが代表理事・会長を務める「一般財団法人嘉納治五郎記念国際スポーツ研究・交流センター」が買収工作のための裏金づくりの舞台となっていたことが発覚しているし、誘致決定後に起きた新国立競技場をはじめとする会場建設費の異常な予算オーバー、エンブレムのパクリ問題なども、森会長のゴリ押しが招いたことがわかっている。しかも、その背後には、ゼネコンと癒着して五輪を利権化していた疑惑までが指摘されている。
ところが、五輪の協賛メディアであるマスコミ、とくにテレビはこうした問題が次々浮上しても、森会長の責任や疑惑をほとんど追及しなかった。それどころか、森会長の自己宣伝に手を貸し、露骨なヨイショをおこなった番組もあった。ほかでもない、松本人志の『ワイドナショー』(フジテレビ)だ。
2019年12月28日に放送された『ワイドナショー 年末スペシャル2019』に森会長がゲスト出演したのだが、大ヨイショ番組を展開したのだ。
なにしろ、森会長が登場すると、松本人志、東野幸治らは、安倍首相が出演したときと同じく、起立してお出迎え。松本は森会長が差し出した手に両手で握手するという恐縮ぶり。そして、東野は「本当に命削りながら、来年2020年、いよいよ東京オリンピックパラリンピックで、国立競技場も完成して」と話を振り、森会長に延々自慢話を展開させたのだ。
しかも、この日の番組には、先日、「森会長がちょっと理解不能な発言」と聖火ランナーを辞退した田村淳も出演していたのだが、田村も当時は「俺、オリンピックのためにここ頑張ったんだよ、ということを知りたいんですよね」などと、信じがたい質問までおこなっていた。
ちなみに、森会長は登場したとき、松本に向かって「あなたが誘ってくれて」と語りかけており、この出演はどうやら松本が企画して実現させたものだったらしい。
こんなとんでもない人物を自分の番組にわざわざ誘って持ち上げるとは、いったいどういう神経をしているのか。
本サイトは当時、この『ワイドナショー』で松本らが繰り広げた醜悪な森喜朗ヨイショの模様をレポートし、その背景を分析する記事を配信している。その記事を再録するので、ぜひ読んでほしい。
世界中が関わるオリンピックという公共イベントの主催団体のトップにこんなトンデモな人物を居座らせ続けた責任はマスコミにもあることがよくわかってもらえるはずだ。
(編集部)