実際、菅首相が心酔しているブレーンである小西美術工藝社社長であるデービッド・アトキンソン氏は、以前から“中小企業の淘汰”を唱え、こう主張してきた。
「人口減少の観点からして、小規模事業者の中でも中堅企業にはならない、なろうとしない、慢性的な赤字企業はただの寄生虫ですから、退場してもらったほうがいい」
「中小企業は、小さいこと自体が問題。ですから、中小企業を成長させたり再編したりして、器を大きくすることをまず考えるべきです。それができない中小企業は、どうすべきか。誤解を恐れずに言うと、消えてもらうしかありません」(「プレジデント」2020年5月29日号)
雇用を守ることを最優先すべきこのコロナ禍にあって「ただの寄生虫」「消えてもらうしかない」と言い切ることには背筋が凍るが、恐ろしいことに、菅首相はこうしたアトキンソン氏の考えを政策に反映させ、実行に移そうとしている。現に、閣議決定された第3次補正予算案のなかの中小企業の支援策は、事業転換が条件。わざわざ〈淘汰を目的とするものではない〉と記しているが、体力がないなかでの事業転換は容易なものではなく、〈人材やノウハウの乏しい中小が取り残される懸念がある〉という指摘も出ている(毎日新聞2020年12月9日付)。
この国を緊急事態まで追い込んだだけではなく、手厚い「公助」が必要となる緊急事態でも「自助」を国民に迫り、さらには火事場泥棒のように目標を達成させようとする──。これは安倍晋三・前首相をも上回る冷血さと言わざるを得ないだろう。
新型コロナ感染拡大による医療の崩壊のみならず、経済面でもこのままでは多くの人びとがこの男に殺されかねない。すでに「持続化給付金」「家賃支援給付金」の打ち切りに対しては野党から批判があがっているが、安倍前首相に一律現金給付を実行させたときのように、再び国民がさらなる支援を求めて声をあげ、菅首相に言うことを聞かせるしかない。
(編集部)
最終更新:2021.01.08 09:41