実際、性差別発言で知られる安倍チルドレン・杉田水脈議員は17日にこのようにツイートをおこなった。
〈最終的に男女共同参画基本計画案から「夫婦別姓」の文言も削除させました。一安心です。〉
杉田議員といえば、今年2月に国民民主党の玉木雄一郎代表が夫婦別姓について代表質問で取り上げ、「速やかに選択的夫婦別姓を実現させるべきだ」と訴えた際、「それなら結婚しなくていい」とヤジを飛ばしたと見られている張本人だが、そんな人物が「文言を削除させた」と勝ち誇ってみせたのだ。
その後、杉田議員は〈「削除させました」→「削除されました」の間違いです〉などと修正したが、こうした極右議員の動きを見れば、一気に動き出すと見られた選択的夫婦別姓制度の導入は、女性蔑視や差別を扇動してきた“安倍チルドレン”の巻き返しによって、進展するどころか大きく後退に追いやられてしまったのである。
しかし、こうした安倍一派の動きや安倍前首相の影響力よりももっと問題にすべきことがある。リーダーシップを発揮することなく黙認していた菅義偉首相の姿勢だ。
実際、菅首相は過去に選択的夫婦別姓の推進を求めており、11月6日の参院予算委員会では日本共産党の小池晃議員がそれを紹介、菅首相が「(過去の言動に)責任がある」と述べたことで野党席からも拍手が起こった。選択的夫婦別姓の導入に期待が集まっていたのは、こうした菅首相の発言もあったからだ。
ところが、自民党内の極右議員たちが反発して動きを活発化させても、菅首相は自民党総裁として党内のとりまとめに力を入れることはまったくなかった。現に、11日に生出演したニコニコ生放送の番組では「なかなか難しい」「党内で大変な議論があったようなので、そういうことをしっかり見ながら判断しないと。あまり感情的にならないように……」などと、まるで他人事のようにコメント。そこには、携帯料金値下げで民間企業にまでプレッシャーをかけ、党内で反発があっても「GoTo」を頑なに中止しなかった“押しの強さ”は微塵もなかった。
安倍前首相のように極右思想を前面に押し出すこともなく、「実務型」「持ち味は突破力」などと持て囃されてきた菅首相だが、その実態は、党内をまとめることもせず、全国調査で7割が賛成している選択的夫婦別姓の制度導入を後退させたのだ。これで「国民のために働く」とは、笑わせるではないか。
メディアや政治評論家のなかには「菅首相は安倍前首相と違って極右的傾向がないからまだマシ」などという意見があるが、こんな調子では、菅政権でも同じように、戦前回帰や女性の人権の軽視がつづいていくのは確実だろう。
(編集部)
最終更新:2020.12.22 11:11