だが、事実を突きつけられても利益相反を認めず、「言論封殺だ!」と逆ギレしたことよりももっと重大なのは、『朝生』での新型コロナ対策をめぐる竹中氏の発言だろう。
たとえば、「GoToトラベル」について菅首相は「『GoToトラベル』が感染拡大の主要な原因であるとのエビデンスは、現在のところ存在しない」などと言い張っているが、これに対してパネリストだった二木芳人・昭和大学医学部客員教授は「『GoToトラベル』が感染拡大にほとんど影響していないというエビデンスもない」「可能性があるものはある程度ブレーキをかけて、感染拡大に歯止めをかける努力はするべき」と指摘した。
これはごくごく当たり前の話だが、これに対し、竹中氏は「先生おっしゃることはわかるんですけれども、政策ってそんなに完璧にできるわけないんですよ(笑)」などと混ぜっ返し、「エビデンスがないっていうのは事実」「7月から『GoTo』がはじまっているが8月から感染者は減っている」と人口最多の東京が「GoToトラベル」の対象となったのが10月であることをネグって主張。「『GoTo』というのは経済を回すためには今後も大変重要な政策として位置づけられる」と語った。
新型コロナ分科会メンバーの経済学者・小林慶一郎氏も「感染者が増えれば経済も止まってしまう」と述べているが、菅首相はそうした意見には耳を貸さず、この現実を直視しない竹中氏のような主張だけを受け入れているのではないかと思わずにいられない。だが、もっと酷かったのは、重症患者をめぐる話題の際の、竹中氏のこの発言だ。
「さっきから医療崩壊の話とか出てるでしょ? でも先程あったように重症患者が430名です。430名の重症患者が出て、この1億2600万人のですね、大きな国の医療が崩壊するなんて、おかしいわけですよ。400人ですよ?」
重症者は1億2600人分の400人にすぎないのに日本の医療が崩壊するわけがない、大騒ぎしすぎだ──。そう言わんばかりのこの主張には、やはり二木教授が “新型コロナ患者には集中的な治療が必要”と述べて、「1人の患者さんに対してECMOという人工肺を回そうと思えば10人くらいのスタッフがかかりきりにならないとそれを回せない」と指摘したが、ようするに、竹中氏は医療現場の逼迫状況についてまるでわかっていないのだ。
いや、竹中氏は医療現場やその体制がわかっていないのではなく、そうした都合の悪い現実は見ないふりをしているのだろう。実際、竹中氏は小泉純一郎政権下で経済財政政策担当相として「構造改革」を主導し、医療・社会保障費抑制策を打ち出した張本人であり、その結果、この国の医療体制の脆弱さがいまあらわになったとも言える。にもかかわらず、そのことを無視しているからこそ、「1億2600万人のうちの400人」などと言い放つことができるのだ。
しかし、恐ろしいのは、このような現実を見ようともしない竹中氏を「ブレーン」として「政府の真ん中」に置いている菅首相だ。いまだに「GoTo」に固執していることからも菅首相は現状を過小評価しているとかしか考えられないが、その背後にこの男がいることを思うと、コロナの医療体制がこれからどうなってしまうのか、背筋が凍るばかりなのである。
(編集部)
最終更新:2020.12.02 12:22