政府インターネットTVより
あまりにも遅すぎるとしか言いようがない。本日夕方におこなわれた政府の新型コロナ対策本部で、菅義偉首相が感染拡大地域を目的地とする「GoToトラベル」の新規予約を一時停止、「GoToイート」の運用見直しを発表した件だ。
しかも、肝心の「感染拡大地域」がどこなのか、一時停止はいつからおこなうのかといった具体的な説明はまったくおこなわれずじまい。その上、今回の発表は感染拡大地域を「目的地」とするのを一時停止の対象としているが、これでは東京都といった感染拡大地域を「出発地」する「GoTo」はOKとなってしまうではないか。
さらに、政府は相変わらず「『GoToトラベル』が感染拡大の主要な要因であるとのエビデンスは現在のところ存在しない」などと言い張っているが、「GoTo」由来の感染者かどうか実態を把握できるような体制はまったく取られておらず、政府はハナから「エビデンス」を得ようとなどしていない。しかも、厚労省の新型コロナ対策アドバイザリーボードによる「一般的には人々の移動が感染拡大に影響すると考えられている」という評価は、尾身茂・分科会会長も昨日の会見で認めた「事実」だ。
ようするに、菅首相は「エビデンスは存在しない」と言い訳できる設計にした上で、新規感染者数が過去最多を更新しつづけているなかでも平然と「人々の移動」を促してきたのだ。
そして、もうすでに3連休がはじまってしまってからの「新規予約の一時停止」である。
あらためて指摘するまでもなく「第1波」の感染拡大では、専門家は3月20〜22日の3連休が「都市部から地方への人の移動」を引き起こし「全国に感染を拡大させた」と指摘した。この「第3波」の到来で最大に警戒すべきなのが「11月の3連休」であることは当然の話だったのだ。
にもかかわらず、「GoTo」の見直しを野党から要求されても菅首相はこれを無視。北海道の感染拡大を受けても「GoToトラベル」からの北海道除外をおこなわず、11月5日の時点ですでに道内の感染経路不明者は6割以上にものぼりクラスター対策が追いつかない状況に陥っていたにもかかわらず、菅首相は10日、「いままでよりも踏み込んだクラスター対応を実施する」などと言って北海道の「GoTo」継続を表明した。
もし、この時点で感染拡大地域での「GoTo」停止を表明していれば、3連休の人の動きがもっと抑制的なものになっていたのは間違いない(それでも遅いことは遅いが)。しかし、菅首相のやったことは逆。11月の3連休が危険だとわかっていながらブレーキをかけることを怠り、「GoTo」継続の表明で国民が危機感を持てないような空気をつくり出してしまった。