北海道への「GoToトラベル」の参加者内でクラスターが発生したというのに、「直接関連したクラスターは発生していない」と言い張る……。ようするに、加藤官房長官はここでもお得意の「ご飯論法」を展開し、北海道をめぐる「GoToトラベル」でのクラスター発生を認めようとはしなかったのだ。
しかし、これこそが菅政権のやり口だ。さんざん指摘してきたことだが、「GoToトラベル」は菅首相の肝いりで、全国の新規感染者数が約2カ月半ぶりに400人を突破した7月10日に、まさかの前倒し実施を発表。この前倒しを決めたのも菅氏だったと言われているが、菅氏は総裁選においても、加藤官房長官と同じように「GoToトラベル」が感染者増加につながっている事実を矮小化させた。
菅氏は9月12日におこなわれた自民党総裁選の討論会で、「この1カ月半の間に780万人の方がキャンペーンを利用しまして、コロナにかかった方が7人だったんです」と言い出し、「しっかり守るべきことを守ればコロナにはそんなに感染しないということがわかった」と発言。そもそも「GoToトラベル」利用の感染者を把握できる体制になっていないため、「コロナにかかった方が7人」と言い切ること自体に疑問を持たずにいられないのだが、その上、感染者7人というのは「GoToトラベル」利用者の〈事前に割引価格で旅行代金を支払った人〉のみを集計したもので、観光庁が把握していた感染者には〈正規価格で代金を支払い、事後申請で割引相当分の還付を受けられる人〉が13人いた(毎日新聞ウェブ版9月24日付)。つまり、菅首相はこの13人を除外して“7人しかいない”と言い張ったのである。
いや、菅首相はもっとひどい発言もおこなっている。「GoToトラベル」を前倒しスタートさせて以降、沖縄県では感染者が急増したが、8月3日の官房長官会見で沖縄の軽症者・無症状者用ホテルの確保状況について質問が出ると、「(政府の)基本的対処方針では都道府県が宿泊療養施設の確保に努めることになっている」「沖縄県が宿泊施設の確保が十分ではない、こうしたことについて、政府から沖縄県に何回となく、そうした確保をすべきであるということを促している」と責任転嫁しはじめたのだ。
しかも、菅氏はまるで政府の言うこともきかずに沖縄県がホテル確保をサボってきたかのように語ったが、実際には国と沖縄県は調整してホテル確保の準備を進めていたことがわかっている。にもかかわらず、「GoToトラベル」が医療体制の脆弱な地方自治体を窮地に追い込んでいることの責任から問題点を自らずらし、一方的に沖縄県を非難したのである。