それが顕著だったのが、4日の衆院予算委員会での、立憲民主党・辻元清美議員の質疑に対する答弁だ。辻元議員は、菅首相が除外した6人のなかで唯一知っていたという加藤陽子・東京大学教授が内閣府の「国立公文書館の機能・施設の在り方等に関する調査検討会議」の委員を務めていることを指摘。よりにもよって内閣府が設ける会議に委員として入っている学者を除外するとはありえないが、この事実を突きつけられた菅首相は、平然とこう答えたのだ。
「内閣でお願いしてるってことを私は承知してませんでした」
一方で政府としてその知見を求めながら一方では排除するとはあきらかに矛盾しているというのに、「知らない」で済ませてしまう……。さらに、辻元議員はつづけて、国立公文書館は日本学術会議の勧告がもとになって設立されたことを指摘したのだが、これにも菅首相はこう答弁したのだ。
「そういうかたちのなかで、あの、公文書管理館ですか? 館ができたという経緯は承知してませんでした」
またも「知らなかった」上に、国立公文書館を「公文書管理館」と言い間違える菅首相。ようするに、排除した学者についても、日本学術会議が果たしてきた役割も何も「知らない」まま、無責任にも攻撃をおこなっていることが顕になったわけだが、ひどいのはこのあと。辻元議員が「任命権者として失格じゃないですか」と問いかけると、菅首相はこんなことを言い出したのだ。
「それは私じゃなくて、みなさんが考えることだと思います」
自身の資質を問われているのに、まさかの国民に丸投げ……。しかも、この日の国会では日本共産党の志位和夫委員長も、任命拒否された教授のもとで学ぶ学生が就職活動に不安を覚えたり、学問の世界で萎縮や自己規制が広がっているとNHKで報道されたことを紹介し、「任命拒否によって学問の自由が脅かされている」と追及。しかし、このときも菅首相の答弁はこんなものだった。
「私自身はそういう状況だってことは思っていません」
実際に実害が出ているという証言があるのに、「そう思っていない」で終わり。こんな答弁が許されれば、どんな現実や事実も菅首相が「そう思っていない」と否認すればないことになってしまうではないか。