黒川弘務・東京高検検事長の定年延長問題でも後付けで「解釈変更した」などと言い出したが、今回も同じような辻褄合わせをおこなうつもりなのか、それとも解釈を変更するにはあまりにも無理があるため「適法だ」で強引に押し通す気なのか──。ともかく、重大な違法性が指摘されるこの問題について、早急な国会審議が求められるのは言うまでもない。
しかし、この騒ぎの最中、なんと菅首相はさらに国会召集を先延ばしにするというのだ。
臨時国会の開催については、9月30日の与野党国対会談では10月23日に召集する方向で調整されていたのだが、菅首相が今月中旬からベトナムとインドネシアを訪問する外遊日程を理由に、自民党側は昨日1日、一転して「26日召集」と方針転換したのだ。
そもそも、菅首相はいまだ国民に向けた所信表明演説もおこなっておらず、所信表明が就任から約40日後になるというのは異常事態であり、それをすっ飛ばして外遊に出かけるとは国民・国会軽視も甚だしい。この決定の背景には外遊に出かけることで「やってる感」アピールをしたいという姑息な思惑もあるのだろうが、同時に、任命拒否問題が騒ぎになることを見越し、少しでも国会論戦を先延ばしにしようとしたのではないか。
しかも、菅首相の動きにはほかにも怪しい点がある。じつは菅首相は昨日の午後、官邸からわざわざ議員会館に赴き、安倍前首相と面談をおこなっているのだ。このタイミングからして、日本学術会議への報復という「安倍政権の継承」を、あるいは今後の対応や方針を報告していても不思議ではないだろう。
今回、菅首相が任命しなかった加藤陽子・東京大大学院教授は、NHKの取材に対し、こんなコメントを寄せている。
「内閣総理大臣が学術会議の決定を経た推薦名簿の一部を拒否するという、前例のない決定の背景を説明できる協議文書や決裁文書は存在しているのでしょうか。この決定の経緯を知りたいと思います」
「総理大臣官邸において従来通り、そのまま承認しようとの動きをもし最終盤の確認段階で止めた政治主体がいるのだとすれば、それは、『任命』に関して、裁量権の範囲を超えたものです」
学問の自由を侵害し、“排除”によって萎縮させようという見せしめを平気でおこなう菅首相。徹底した追及が必要だ。
(編集部)
最終更新:2020.10.02 06:51