黒川氏といえば、言わずもがな安倍政権幹部をめぐる不正の捜査をことごとく潰してきた人物だが、黒川氏のカウンターパートは菅官房長官だ。その付き合いは約15年にもなると言われ、ふたりが会っているところが頻繁に目撃されてきた。つまり、捜査を握りつぶしてくれる「用心棒」として黒川氏と安倍政権の強いパイプを築いたのは菅官房長官だったのだ。
そして、ある意味、最大の功労者たる黒川氏を検事総長にしようと、異例の人事がおこなわれる。昨年、法務省は次期検事総長として複数の候補者を提案したが、〈安倍首相と菅官房長官は黒川氏が望ましいとの意向を示した〉(読売新聞2月21日付)ことで覆り、2月に定年を迎える黒川氏の「異例の定年延長」人事が実行されたからだ。
しかも、菅官房長官が黒川氏の人事に口を出したのはこれが最初ではなかった。2016年夏、当時法務省事務次官だった稲田伸夫氏の異動に伴い法務省は、後任の法務省事務次官に刑事局長だった林真琴・現検事総長を、黒川氏を広島高検検事長に据えようと人事案を官邸に上げたが、それを蹴ったのは菅官房長官だったと言われている。
三権分立の原則に反し、政府から独立した機関であるべき検察の人事に平気で介入する──。そして、総理の座に就いた途端、菅首相は「学問の自由」を脅かす人事介入をおこなってみせた。当然、こうした人事介入が見せしめとなり、日本学術会議や学者に萎縮が広がる懸念もある。
安倍政権で進行した「独裁化」「恐怖政治」を推し進める姿勢を、早くもこうしたかたちであきらかにした菅首相。これまで以上に、反対や抵抗の声をあげる必要がある。
(編集部)
最終更新:2020.10.01 06:01