その最たるケースが、2018年の正月にBS朝日で放送された新春討論の一幕だ。この番組で小松アナは司会を務めたのだが、パネリストだったジャーナリストの青木理氏が安倍政権を批判したところ、小松アナはこんなことを言い出すのだ。
「そこまで『史上最悪の政権だ、安倍内閣は』というふうに、青木さん、言うのであれば、対案がないとね、説得力伴わないですよ」
問題のある政策や不正の発覚、政治家の暴言などに対して指摘や疑問を挟むといったジャーナリズムの役割を放棄するだけではなく、むしろ政権を擁護するという報道人としてあるまじき態度をとる小松アナが、政権批判に対して繰り出した言葉が「対案を出せ」って……。これに対し、青木氏は「ジャーナリストという立場で対案を出すのが僕は仕事だとは思っていない」と語るのだが、当たり前の反応だ。何度も言うが、メディアがなすべきことは権力の暴走をチェックすることであって、反対意見や批判を表明するだけで十分であり、対案などは必要ないからだ。
この発言ひとつとっても、小松アナが報道を扱うジャーナリストとしての教育をちゃんと受けている人物とは到底思えず、「対案出せ!」と吠えればいいと考えている点といい、小松アナはSNSで跋扈する有象無象のネトウヨとまったく同じなのだ(実際、ネトウヨは何かあるとこの動画を持ち出し「小松無双!」「小松アナが青木理を論破!」などと小松アナを称賛している)。
と、このように、小松アナはだてに“ネトウヨキャスター”と呼ばれているわけではない、ということがよくおわかりいただけたかと思うが、問題は、この人物をよりにもよって看板報道番組のメインキャスターに抜擢したテレビ朝日にある。
周知のように、この数年、安倍首相べったりの早河洋会長らテレ朝上層部は『報ステ』の政権批判封じ込め人事をおこなってきた。2018年7月には、早河会長の子飼いである桐永洋氏をチーフプロデューサーとして送り込み、同年9月には小川彩佳アナを番組から追放して早河会長お気に入りの徳永有美アナをMCに起用。政権批判や原発報道を極端に減らしてスポーツなどをメインにするリニューアルをおこなった。
その後、桐永CPは昨年8月末、女性アナウンサーやスタッフへのセクハラが問題となりCPを解任され、『報ステ』の政権批判封じ込めも終わるかと思われたが、そんなことはなかった。昨年12月、「桜を見る会」報道に絡んで自民党の世耕弘成・参院幹事長から抗議を受けたことをきっかけに、後任の鈴木大介チーフプロデューサーをたったの7カ月での更迭を決定。さらに、社員スタッフ5人の1月1日付での異動と、社外スタッフ約10人に対しても3月いっぱいでの契約打ち切りを宣告した。