というのも、今回、菅首相がデジタル庁の創設に向けてデジタル改革相に抜擢した平井氏は、上智大学卒業後に電通に入社した「電通OB」であり、自民党内で平井氏の功績とされている「ネット戦略」も、平井氏が電通と組んで繰り広げたものだったからだ。
電通が長きにわたり自民党の選挙広報をほぼ独占状態で引き受けてきたことは有名だが、第二次安倍政権発足以降、その関係はただのクライアントと広告代理店のレベルではなくなり、いまではネットのSEO 対策(検索エンジン最適化)、政権批判の監視やメディア、野党への匿名攻撃などまで請け負うなど、“安倍政権の情報操作部隊”というべき存在になっている。
そのはじまりは2013年の参院選挙で自民党がネット対策の特別チーム「Truth Team」(T2)を立ち上げたこと。そして、この「T2」のトップこそ、当時、自民党広報本部長だった小池百合子氏と、広報本部長代理兼ネットメディア局長だった平井氏だったのだ。
実際、平井氏自身も2019年12月24日付の読売新聞のインタビューで、この「T2」と電通のかかわりについて、こう答えている。
「あれが一つの集大成だった。それぞれの分野で得意な企業を集めて電通に取りまとめをお願いし、候補者に配ったタブレット端末を通じて、1日に何回も「こういうフレーズを使うべきだ」「こういう言い方はやめるべきだ」という分析結果を配信した」
本サイトの取材では、この平井氏の功績である「T2」はいまも毎年、自民党から電通に発注されつづけていることがわかっている。選挙や対立する政治課題が持ち上がったときは特別な指示を出してSNS監視や対策を電通にやらせているといい、たとえば先の沖縄県知事戦でも玉城デニー知事をめぐってさまざまなデマ情報がネット上で拡散したが、「これらのなかにも電通が仕掛けたものがいくつもある」(自民党関係者)という。
選挙で勝つためにはデマさえも平気で流すという自民党のネット対策の根本をつくり上げ、SNSで「黙れ、ばばあ!」と匿名投稿するような人物が「ITに強い」などと持て囃され、デジタル改革相に抜擢されるとは、これだけでもこの国のデジタル化政策は一体どんなものになるのか暗澹たる気持ちにさせられるが、電通に近い平井氏がその大臣となったことで、「デジタル庁」創設が電通との癒着の温床になる懸念は高まったと言えるだろう。
甘い汁に群がるパソナと電通、利益誘導をはかる政権──。本日発売の「週刊文春」(文藝春秋)では、菅首相が「Go Toイート」事業を受注する「ぐるなび」の創業者で現会長の滝久雄氏が会長を務める広告代理店から多額の寄付を受けてきたことなどが報じられているが、安倍政権が終わっても、菅政権では同じような“お友だち企業への利益誘導”という同じ光景が繰り広げられることになるのは間違いなさそうだ。
(編集部)
最終更新:2020.09.17 12:11