しかも、酷かったのは「ご飯論法」によるはぐらかしだけではない。加藤氏は“労働者から労働時間規制を外すことに肯定的な意見がある”と主張して、「働く方からいろんなお話を聞かせていただいている」「私が企業等を訪問したなかでお聞かせいただいた意見、声」などと答弁していたが、その後、肝心のヒアリングした人数はたったの12名、しかも厚労省が依頼した企業側が選定・同席するという“ヤラセ”調査だったことが発覚。さらに、加藤氏が直接話を聞いたかのように語っていたケースは、労働基準局の職員が聞き取った1例にすぎなかったこともわかった。その上、法案要綱が示される以前に労働者に聞き取りをおこなった件数はなんとゼロ。つまり、「労働者のニーズ」に実態はなく、法案が必要であるという根拠も完全に崩れたのだ。
さも自身が自ら企業に出向き直々に大勢の労働者から話を聞き、多くの要望の声が寄せられているかのような答弁をおこなっていたのに、それは虚偽答弁だった──。しかも、過労死遺族がこの高プロ創設に反対していたが、2018年6月26日の参院厚労委員会では、その過労死遺族が傍聴しているのに、野党からの質問に対し、安倍首相と加藤氏が一緒になって口を開けて大笑いする場面さえあった。
「ご飯論法」で説明すべき問題を説明せず、あきらかな間違いを認めず「不適切ではない」「(国民の)誤解だ」と言い張り、「被害者」の思いをも平気で踏みにじる……。無能かつ無責任、そして国民の生命を軽視する冷酷さを隠さない。それこそが加藤勝信という男の本質だ。
そのような人物を、危機管理の要であり、国民に対してていねいな説明をおこなうことを担う官房長官の役割につかせようというのだから、これは正気の沙汰ではない。菅義偉氏が思い描く「恐怖政治」は一体どんなかたちになるのか──明日の組閣を注視しなければならない。
(編集部)
最終更新:2020.09.15 09:25