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全米決勝進出! 大坂なおみの「黒人差別抗議マスク」に冷ややかな反応しかしない日本のマスコミとスポンサーの意識の低さ

 しかし、日本はどうか。いまだに「スポーツに政治を持ち込むな」などという大坂選手に対するバッシングの声が止まない。ネットでは「所詮、日本人じゃない」などという差別的な言葉すら投げつけられている。11日の『報道ステーション』(テレビ朝日)では、大坂選手の6枚のマスクにプリントされた黒人被害者たちを当時のニュース映像とともに詳細に紹介していたが、こうした報道はごくわずかだ。

 毎日新聞は9月11日に「大坂なおみの人種差別抗議に国内外で温度差 スポンサーの微妙な事情」という記事を掲載。「上まで勝ち上がっている時にやらなくてもね。できればテニスのプレーでもっと目立ってほしいんですけど……」「黒人代表としてリーダーシップをとって、人間的にも素晴らしい行為だとは思うが、それで企業のブランド価値が上がるかといえば別問題。特に影響があるわけではないが、手放しでは喜べない」「人種差別の問題と本業のテニスを一緒にするのは違うのでは」などという、大坂選手の支援企業やスポンサー関係者の声を紹介していた。

 彼らはいったい、なんのために大坂選手のスポンサーになっているのだろう。記事では具体的な企業名はは明記されていないが、大坂選手のスポンサーということは世界での知名度やブランドイメージを上げたいと考えているのだろうが、それにしてはあまりに世界の実情に対する認識も人権感覚も欠けているとしか言いようがない。

 ただし大坂選手自身は、こうした日本のスポンサーの反応をある程度予想していたかもしれない。アメリカ「TIME」(8月20日)のインタビューで、ジョージ・フロイドさんが殺されたミネアポリスを訪れたことで「人生が変わった」と話したうえで、スポンサーについてこう語っている。

「多くのアスリートは発言することで、スポンサーを失うことを恐れています。私の場合、多くのスポンサーが日本の企業なので、本当にそうです。彼らは、私が何を話しているかわからず、困惑したかもしれません。でも、何が正しいのか、何が重要か、話さなくてはならないと感じる瞬間は訪れます」

 スポンサーが困惑するかもしれないけれども、それでも話さなくてはならない、正しいこと、重要なことがある。そんななか、ジョージ・フロイドさんに続き、ジェイコブ・ブレイクさん銃撃事件が起き、大坂選手はボイコットを表明、全米オープンでは7枚のマスクを身につけ、反差別を訴えたのだ。

 日本のメディアでは、大坂選手について「日本人らしい謙虚さ」「日本の心」などと強調されることが多い。しかしそれは多様なバックグラウンドを持つ大坂選手の、ほんの一面にすぎない。周知のとおり、大坂選手は日本人の母とハイチ出身の父の間に生まれ、アフリカ系のルーツも持ち、アメリカで育った。日本でもアメリカでも多くの差別に晒されてきたことも想像に難くない。差別に憤り、ときに激しい言葉も使いながら発言するのは当然だし、それも大坂選手の魅力だろう。

 ところが、日本では大坂選手の怒りがきちんと伝えられていない。テニスは強いけど、控え目で自分の意思で発言したりしない、ただ自分たちの「日本スゴイ」を満たしてくれる。そんな都合のいい存在に押し込んでおきたいのではないか。

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