なかでも絶句したのは、フジテレビの官邸担当キャップである鹿嶋豪心記者だ。鹿嶋記者の質問は、こういうものだった。
「6月の検診で再発の徴候が見られ、先月の中旬頃から体調に異変が生じたということなんですけども、今回のこの辞任という決断にいたるまでですね、総理は土日も休みがなく、ほとんど公務にあてられていた時間、まあ、頭の中でもそういうふうに考えられていた時間が多かったと思うんですけれども、最近、総理に面会した多くの方々が『しっかり休んでほしい』と、『疲れがたまっている』と。『でも総理はなかなか休みたがらないんだ』という話も聞きました。いま思えば、総理はもう少し、こういった結論、決断をされる前にですね、しっかり休んでおけばよかったとか、もうちょっとメリハリをつけておけばよかったとか、そういった後悔はありますでしょうか」
わざわざ“公務のない日も頭では考えていたはず”などと極度の忖度までした挙げ句、国会を開こうとも出席しようともしなかった安倍首相に対し、「しっかり休んでおけばよかったと後悔はないか」と言い出したのである。
もちろん、まるで側近政治家が口にするようなこの激甘な質問に対し、安倍首相は「自分自身の健康管理もですね、これは総理大臣としての責任だろうと思います」などと言いつつ、「同時に、まさに見えない敵と悪戦苦闘するなかにおいてですね、全力も尽くさなければいけないという気持ちのなかで仕事をしてきたつもりでございます」と“僕はがんばった”アピールを発動させていた。
この鹿嶋記者、じつは6月18日におこなわれた前回の総理会見でも、同日に逮捕された河井克行・案里氏の問題について、「自民党から振り込まれた1億5000万円の一部が買収資金に使われたことはないということでいいのか」などと“使われていない”という前提のあり得ない質問をおこなっていたが、もはや骨の髄まで忖度体質が染み付いてしまっているのだろう。
たしかに、辞任を発表した会見なのだから、後任や体調の話題に集中してしまうのもわからなくもない。だが、どうして国会を開こうともしない安倍首相の姿勢を問いただす記者がひとりもいなかったのか。