しかも、さらにとんでもないのは、このタイミングで、新型コロナの新たな「対策パッケージ」なるものを発表するということだ。「健康不安」説によって同情論が集まってきたところで逃げてきた会見を開き、大々的に新たな新型コロナ対策を発表することで「病を押して対策にあたるリーダー」を演出しようという腹づもりなのだろう。
まったく、感染拡大の局面で何ひとつ対策を打ち出そうともしなかったのに何をいまごろ……としか言いようがないが、しかし、問題はその中身だ。
安倍首相は会見で、ワクチンの確保のために予備費を計上することや雇用調整助成金の特例を年末まで延長する件などを表明するとみられているが、注目すべきは新型コロナの位置づけの問題だ。
TBSの報道によると、会見で公表されると思われる対策案では〈新型コロナは「季節性インフルエンザまでの感染性を有していない」として社会経済活動と感染対策の両立を図る〉とし、その上で検査体制について〈各都道府県に対し、早期に新たな検査体制の整備計画を策定するよう要請する〉という。また、複数の報道では“新型コロナを感染症法上で「2類相当」と位置づけている点を見直す見通し”だとされ、一部では「指定感染症から外す」「インフルエンザ相当の5類にまで引き下げるのでは」という声も出ている。
新型コロナを指定感染症から外す、あるいは「2類相当」から「5類」扱いにまで引き下げる──。もしこれが本当ならば、感染防止対策どころか、感染拡大をもたらしかねない大変な問題だ。
そもそも「2類相当の見直し」について政府からは、2類は入院勧告の対象で軽症・無症状でも入院措置となり医療機関に負担がかかっているため、といった意見が出ているが、2類相当の現在でも軽症・無症状者は必ず入院措置がとられているわけではなく、ホテルや自宅での療養という措置も厚労省の通知によりとられている。逆に指定感染症としてレベルが下がったり、指定感染症から外すことになれば、いまは公費で賄われている入院費に自己負担が生じる可能性もある。そうなれば、これまでは入院措置がとられた人が入院を拒否することも十分考えられる。さらに、自治体によるホテル確保も義務ではなくなるのではないか。いや、それどころか、インフルエンザと同じような扱いになれば、濃厚接触者の追跡といった疫学調査がおこなわれなくなり、現在のようには細かく新規感染者の動向やデータが公表されなくなることも考えられるだろう。
やたらと政府は「多くの人は軽症・無症状」と強調するが、新型コロナは重症化する恐れがあるものだし、軽症から急変し一気に病状が悪化するケースも多い。また無症状でも感染力があることが感染拡大の要因となっている。にもかかわらず、過小評価するような措置をとれば、感染拡大に手を貸すことになるのは必至だろう。
実際、昨日27日におこなわれた関西2府4県の知事が出席した「関西広域連合」の会議では、「感染拡大防止と医療提供体制の確保に全力で取り組んでいる中、指定感染症のレベルを下げるのは時期尚早だ」とし、「2類相当」を維持するよう国に求める意見書がまとめられた。
あまりにも当然の動きだが、しかし、安倍首相の動きはまったく逆だ。昨日27日放送の『ひるおび!』(TBS)では、“安倍官邸の代弁者”たる田崎史郎氏も、安倍首相の動きについてこう語っていた。
「先週、総理は厚労省などに、ワクチン対策、感染症の類型の見直しとか、そういうことについてパッケージで示したいんで案をつくってほしいと要請したんですね。それが昨日あたりようやくあがってきた」