本サイトでは繰り返し指摘しているが、普通、国のリーダーの体調問題は求心力低下を招く大きな要因になるため、古今東西、体調不良にかんする問題ははっきりと否定するものだし、官邸も自民党も徹底した情報統制を敷く。少なくとも検査結果に大きな問題があれば秘密裏にその結果を知らせ、追加検査が必要な状況なのであれば、メディアに知られないような形で検査をおこなうだろう。
ところが、安倍首相と周辺は先週もきょうも、むしろ積極的にマスコミに情報をリークして「健康不安」「重病の可能性」の情報が流れるような方向にもっていっているのだ。
正直に言って、安倍首相の体調がどういうものであるかはわからないが(検査の悠長さを考えると、たいしたことがないと考えるのが普通だが)、安倍首相も官邸も、さらには自民党も、あきらかに「健康不安」説を使って国民の同情を集めようとしているのは間違いないだろう。
現に、先週の受診と「健康不安」説扇動も明らかに功を奏した。テレビなどでは安倍応援団が「安倍首相はがんばりすぎ」「責任感が強い」「しっかり休んでほしい」と喧伝。ネット上でも同情の声が高まった。これに味を占めて、今度はさらに派手に病院入りパフォーマンスをぶちあげたということではないのか。
しかし、だとしたらその目的はなんなのか。やはり辞任のための地ならしか、休みを取ることを正当化するための世論づくりか。あるいは、安倍首相はまだまだ続投するつもりだが、健康不安情報を流してコロナ対応の失策をすべてチャラにしようとしているのか。
いずれにしても、これは総理大臣としてあまりにも無責任すぎる態度であると言わざるを得ない。このコロナ禍の最中に自身の「健康不安」説が流布しているのだから、安倍首相はきちんとその病状を国民に説明すべきなのだ。仮に検査の最終結果が出ていないとしても、ここまで情報をダダ漏れにさせたのだから、途中経過をきちんと報告すべきだろう。
安倍応援団は「首相であろうと病気の話は人権問題だ」「病気まで揶揄するのか」などと叫ぶだろうが、一国の総理大臣の健康状態はプライベートなことではなく、パブリックな問題であり、総理大臣が国民に病状について説明をおこなうのは当然の義務だ。たとえば、もし総理大臣が重病だったり余命がいくばくもないとしたら、それは意思決定に明らかに影響を与える、ひいては国家の行方を左右しかねない。もし説明もせず、邪推もされたくもないというのなら、即刻、総理大臣を退くべきなのだ。
だが、それでも安倍首相は国民と向かい合って説明しようとはしない。実際、本日も「体調管理に万全を期してこれからも……これからまた仕事を頑張りたい」と、「これからも」という言葉を修正して「これからまた」と憶測を呼ぶような言い換えをおこなう一方で、検査結果については何ひとつ明かさなかった。
あえて言う。安倍首相がいたずらに国民に不安を広げるだけで、体調について説明をおこなおうとしないのであれば、マスコミは政権・自民党幹部の「健康不安」説に乗っかるだけではなく、安倍首相の体調について踏み込んで取材し、国民にその事実をあきらかにするべきだ。
(編集部)
最終更新:2020.08.24 08:59