この問題をスクープしたNHKの報道によると、たとえば3月2日に専門家会議が出した「見解」では、専門家側は「無症状あるいは軽症の人が感染拡大を強く後押ししている可能性がある」と文書をまとめていたものの、政府側が「パニックが起きかねない、無症状の人に対しては何もできない」とし、最終的に「症状の軽い人も気がつかないうちに感染拡大に重要な役割を果たしてしまっている」という表現になったという。
「無症状の人に対しては何もできない」なんて、そんな話があるか。積極的な検査によって感染者をあぶり出し、感染を広げないために無症状でも隔離をおこなって経過観察するべきだという指摘は当時から出ていたし、「無症状でも一律入院」という指定感染症の縛りによる医療機関の逼迫を懸念するのならそれを見直すべきだったのだ。にもかかわらず「何もできない」という理由で無症状者による感染拡大の事実をなんとか矮小化させようとしていたとは……。
そして、この報道を受け、専門家会議の会見では脇田座長も「(政府から)そういった発言があったかもしれないが、それで落とされたということではない。十分な知見がないなかで入れるべきかを議論し、我々の見解としてそうなった」とコメント。政府から文言の削除や修正の横槍が入った事実については認めている。
そもそも、「帰国者・接触者相談センター」に相談できる目安を発熱が4日以上続いた場合とした「4日ルール」もそうだった。PCR検査の拒否を正当化し、感染の拡大、重症化の大きな原因となったこの「4日ルール」は2月17日、加藤勝信厚労相が「最終的に専門家の座長と相談してこういう数字を決めさせていただいた」と説明して発表したのだが、専門家会議では「4日ルール」に異論が噴出していた。
「厚労省は当初、4日ルールを含むこの目安について、2月16日の専門家会議の初会合のあと、専門家会議の公式見解として発表させるつもりだった。ところが、反対意見が出て議論がまとまらず、当日は出せなかった。それで加藤厚労相が脇田座長とかけあって、独断でこの目安を発表した。つまり、この4日ルールに科学的根拠はなかった。すべては安倍政権と厚労省が検査体制のキャパシティ不足をごまかすために強行したんです」(前出・厚労省担当記者)
ようするに、政府は専門家から出された危機感を“検閲”し、自分たちにとって不都合な事実を覆い隠すためにコントロールしてきたのである。しかも、朝日新聞の報道によると、24日の専門家会議の会見で公表された提言も、〈政府・厚労省側から注文がつき、一部の文書が変更された〉という。