自民党の河井克行前法相の妻、案里参院議員(広島選挙区)の選挙違反事件で、案里氏の公設第二秘書が、3日広島地検に逮捕された。克行氏の政策秘書も合わせて逮捕された。安倍首相は逮捕報道の直前、参院予算委員会で、案里議員に対してまるで他人事のように、「国民に説明を果たす責任を負っている」と述べたが、国民に説明する責任を果たしていないのは、安倍首相も同じだろう。
本サイトで繰り返しお伝えしてきたように、河井案里氏の選挙はまさに安倍首相が後ろ盾になっており、今回の逮捕容疑であるウグイス嬢への違法な報酬も“安倍マネー”が原資になっていたからだ。
あらためて事実関係を振り返ろう。まず、河井案里氏の参院選出馬自体が、安倍首相の意向だった。案里氏が立候補した広島選挙区はもともと自民党の重鎮で前職の溝手顕正氏が単独で立つ予定だった。だが、安倍首相の鶴の一声で、新人の案里氏が2人目の候補として立つことになったのだ。
自民党は表向き“2人区で2人擁立して票を上積みする”としたが、この背景には、安倍首相の溝手氏に対する個人的な恨みがあったというのが永田町では定説になっている。溝手氏は第一次政権下の参院選で自民が大敗した際、安倍首相の責任に言及、下野時代には安倍氏を「過去の人」と批判していた。これに恨みを持った安倍首相が溝手氏を追い落とすために案里氏を新人として立たせたというのだ。
メディアでは案里氏の夫・河井前法相が菅官房長官の側近であったことから、案里氏は“菅官房長官の人選だった”などと報じられているが、実際はそもそも夫の河井前法相は、菅官房長官以上に安倍首相と密接な関係を築いていた。
現に、河井氏は総裁外交特別補佐を務め、2016年に米大統領選後はトランプが当選すると就任前に河井氏に渡米して地ならしすることを指示。トランプタワーでの安倍・トランプ初会談にも同行するなど、安倍首相は河井氏を買っていたのである。案里氏に白羽の矢が立ったのも、子飼いの河井氏との深い関係があったからだ。
実際、選挙戦における安倍首相の案里候補への力の入れようは際立っていた。安倍首相は自ら案里氏の応援に駆けつけるだけではなく、秘書を広島の案里氏の選対に送り込んだほど。「週刊文春」でも、安倍首相の地元事務所の筆頭秘書をはじめとし少なくとも4人の秘書が広島入りしていたと自民党県議が証言。しかも、「溝手支持で決まっているところにも手を突っ込もうとして動いとった」とも語っており、いかに安倍首相が溝手追い落としに躍起になっていたかがよくわかる。
しかも、安倍首相は案里氏に異例の金銭的支援を行なっていた。1月23日発売の「週刊文春」(文藝春秋)が、公選法違反疑惑が持ち上がった昨年の参院選における河井夫妻それぞれが代表を務める党支部への“入出金記録”を入手。そこには、自民党本部から案里氏が代表を務める自民党広島県参議員第七選挙区支部に4月15日〜6月10日のあいだに計3回にわたって合計7500万円が、克行氏が代表の自民党広島県第三選挙区支部にも6月10日、27日に2回に分けて同じく計7500万円、ふたり合わせて合計1億5000万円が振り込まれていたことが示されていた。さらに、「文春」は克行氏が代表の党支部に振り込まれた分を30万円を残したかたちで案里氏が代表の党支部に移し替えていたことを示すLINEのやりとりまで報じた。