さらに、翌8日には時事通信が「日本の対応「米英も評価」 中国の国家安全法導入方針で―菅官房長官」というタイトルで記事を配信すると、ネトウヨは「デマが確定した」として大騒ぎ。本田選手もこの記事をリツイートし、こう投稿したのだ。
〈共同通信がフェイクニュースでヤバい方やったか。
政府の皆さん、すみません。〉
そして、この本田選手の投稿が「ちゃんと謝罪する本田△ですわ」「あなたへの信頼が強くなりました」などと称賛を浴び、「サッカーダイジェストWeb」もネット記事で「「カッコいい漢」「信用できる」本田圭佑が報道を受け日本政府に謝罪。非を認める姿勢に称賛の声」などと紹介。いつのまにか共同記事は完全に「デマ記事」だったことになってしまっているのだ。
だが、はっきり言って、この「共同はデマ記事」という決めつけのほうこそ、あきらかな「デマ」だ。
実際、「デマ認定」の決め手となっているのは時事通信が伝えた8日の菅官房長官の発言だが、じつは、菅官房長官はこの会見で報道を否定してなどいない。
まず、8日の会見では、産経新聞の記者が共同の報道を取り上げ、「(米英などから共同声明の)打診の有無があったのか、そして拒否をしたのか、事実関係を含めて教えて下さい」と質問したのだが、菅官房長官は「国家安全法制」を中国の全国人民代表大会で導入方針が採択された5月28日に「我が国は他の関係国に先駆けて、直ちに私および外務大臣から深い憂慮を表明」したとし、外相の指示のもと秋葉剛男外務次官が駐日中国大使に「こうした我が国の立場を直接、明確に申し入れをおこなった」と回答。その上で、こう述べたのだ。
「このように我が国は強い立場を直接、ハイレベルで中国側に直ちに伝達するとともに、国際社会に対しても明確に発信してきている。米国や英国をはじめとする関係国は我が国のこのような対応を評価しており、失望の声が伝えられるという事実はまったくない」
「本件については関係国と緊密に連携して対応しているが、関係国との関係もあり、外交上のやりとり一つひとつについて答えることは差し控えるが、いずれにせよ繰り返すが、米国や英国をはじめとする関係国は我が国のこのような対応を評価している。このことをあらためて申し上げておきたい」
ようするに、菅官房長官は「共同声明の打診はあったのかどうか、そしてそれを拒否したのかどうか」という問題には一切答えず、「米英は日本の対応を評価している」と繰り返しただけなのだ。
この菅官房長官の回答はあきらかにおかしい。もし「日本が打診を拒否した」という共同の記事がまったくの事実無根だったとしたら、いつものように「そうした事実はない」「ご指摘は一切あたらない」と強く否定したはずだ。だが、それを言うこともなく、「米英は日本の対応を評価している」と主張して押し切っただけなのである。
また、菅官房長官は単独で「憂慮を表明した」ことを持ち出してごまかしているが、中国を厳しく批判した米国や英国などの共同声明とはまったくレベルが違う。