しかも安倍首相は自ら、こんなことを語り始めた。
「と同時にですね、開催するうえで、科学者のみなさんの力が大変いま必要とされています。お薬とワクチンがしっかりとできる、このことによって、新型コロナウイルスの収束は、日本だけでなく世界中で収束させなければなりません。そのためには治療法、ワクチンが必要だと思っています」
「できるだけ早くですね、ワクチンが開発されることを期待したいと思います」
「オリンピックを成功させるためにも、治療薬・ワクチンの開発を日本が中心になって進めていきたいと思っております」
五輪開催の是非を問う質問者の声にはまったく答えることなく、例のワクチン頼みを繰り返して回答を終えたのである。
進行役を務めていた馬場典子アナはこのまま次の質問へ移ろうとしたのだが、ここで山中教授がわざわざ割って入ってきた。
「来年の7月にオリンピックが延期。僕は最初、2年後になるのか1年後になるのかと思っていて、これが1年後に決まったとき、これは、研究者にすごい宿題を与えられたなと思いました。やはり首相が言われたように、治療薬とワクチンの開発が絶対条件になっていると思います。そのなかでも、ワクチンは早いものは治験が海外では始まっておりますが、ただオリンピックを開催するくらい、オリンピックというのは、世界中から選手が来、そして世界中から観客が来る、すごい人間の大移動が起きる大会ですから、これを可能にするだけのワクチン量を1年で準備できるかどうかというと、これ研究者として、率直に、かなり幸運が重ならない限り、ワクチンだけでは難しいんじゃないかなと思います。でも、幸運が重なればあり得ますが。僕がワクチン以上に期待しているのは、やはり薬でありまして。この薬もですね、新たな薬の開発はもう絶対間に合わないので、首相が言われたアビガンであるとかイベルメクチンであるとか、そういった既存薬、これによって、新型コロナウイルスがインフルエンザと一緒くらいの怖さ、そこまで持っていけたら、全然状況は変わると思いますから」
山中教授は安倍首相にアビガンなど既存薬の早期承認を訴えつつ、あらためてこう釘を刺した。
「新規のこのウイルス専用の薬の開発も科学者は一生懸命やっていますが、これはやっぱりいくらがんばっても普通にやったら10年20年かかりますから。いくらウルトラQでがんばっても、やっぱり2年3年かかって、オリンピックには間に合いませんので。ぜひ既存薬、日本にたくさんあるいい既存薬の早期の承認をお願いできたらと思っています」