内閣府が約100億円のもうひとつの名目としてあげている「感染症対策や経済対策など喫緊の取り組みについての国内広報」も同様だ。国際広報に比べれば、「国内広報」はたしかにある程度、必要かもしれないが、国民の生活支援や休業補償を拒否しながら、なぜ広報だけ100億円もの金をつぎ込む必要があるのか。しかも、これも厚労省が「新型コロナにかんする国民の不安や疑問に対応するためのコールセンター設置や広報の充実」として予算を35億円計上。内閣官房も〈国民に対する正確で分かりやすくかつ状況の変化に即応した情報提供等を、ソーシャルメディア等の多様な媒体を通じて、迅速かつ積極的に行う〉ための予算として4億2400万円を計上しており、完全に二重、三重どりになっている。
一体どうして、各省庁で、国民への直接支援とは関係のない巨額の広報予算の無駄遣いがおこなわれているのか。
答えは簡単だ。安倍政権が広報に金を出す方針を打ち出しているからだ。安倍政権は「GDPの2割に当たる事業規模108兆円」の緊急経済対策を閣議決定するにあたって、5本の柱、つまり施策方針を立てている。
その1番目は「感染拡大防止策と医療提供体制の整備及び治療薬の開発」というものなのだが、そのなかに、「マスク・消毒液等の確保」や「検査体制の強化と感染の早期発見」、「医療提供体制の強化」などと並んで、「情報発信の充実」という項目が掲げられているのだ。
もちろん、本来は正確な感染状況や医療情報を国民に伝える目的もあったはずだ。しかし、普段から、広告代理店やSNSマーケティング業者とグルになって情報操作に血道を上げている安倍官邸は、この予算の趣旨を政権への批判封じや情報操作に利用できるようにねじ曲げてしまったのである。
「内閣府以下、各省庁はもう官邸が何をやりたいか、わかっていますからね。一旦、方針を打ち出せば、忖度して競うように官邸の意向にあった使い方を始める。森友や加計のときとまったく同じですよ」(全国紙政治部記者)
国民が窮状を訴えても聞く耳を持たず、自分に向けられる批判を抑え込むための情報操作には金をつぎ込む──。まったく許しがたいが、この責任は国民やメディアにもある。メディアが安倍政権の情報操作に協力し、国民がそれを疑わずに簡単に乗せられてきた結果、安倍首相や政権幹部たちはとにかく情報操作にさえ金と力をかければ、どんな不正や失政をしても、批判を封じ込めると増長してしまったのだ。
しかし、今回の危機はまさに自分たちの命がかかっているのだ。今度こそ、こんな姑息な情報操作に惑わされることなく、生活支援と休業補償を強く求めていく必要がある。
(編集部)
最終更新:2020.04.11 11:29