首相官邸HPより
17日、衝撃的な数字が発表された。消費増税後の2019年10〜12月期の国内総生産(GDP)がマイナス1.6%(速報値)、年率換算でマイナス6.3%という大幅なマイナス成長となったのだ。
GDPの落ち込みは予想されていたことだったが、民間の予測平均はマイナス3.7%だった(NHKニュース17日付)。それがまさかのマイナス6.3%……。東日本大震災の影響を受けた2011年1〜3月期がマイナス6.9%だったことを考えれば、この数字がいかに深刻なものかがわかるだろう。
しかもこれは速報値であるために今後、下方修正される可能性もある。実際、前回増税がおこなわれた2014年4〜6月期は速報値が年率マイナス6.8%だったが、その後、マイナス7.1%に修正されている。そもそも、今回は前回の税率3%引き上げより低い2%の引き上げにもかかわらず、前回に近いマイナスになっているということは、それだけ家計や経済に重大なダメージを与えているということの証左だ。
恐れていた「増税不況」に突入した日本経済──。実際、昨日18日に米ウォール・ストリート・ジャーナルは社説で「日本の消費税の大失態」とタイトルを打ち、「日本が安倍氏の経済政策の失敗の代償を回避することはできない」と批判をおこなっている。
だが、名指しで批判されている当の安倍首相は、日本経済を最悪の状況に陥れたことを無視し、GDPマイナス6.3%という衝撃の数字を突きつけられても、「消費増税だけのせいじゃない」と言い張り、いまだにこんなことをほざいているのだ。
「おもに個人消費が消費税率引き上げにともなう一定程度の反動減に加え、台風や暖冬の影響を受けたことから前期比マイナスに転じました」
「良好な雇用、所得環境に加えて、今後、経済対策の効果が発生していくことを踏まえれば、我が国、経済は基調としては今後とも内需主導の緩やかな回復が継続していくものと考えております」(17日衆院予算委員会での答弁)
「増税だけじゃなくて台風や暖冬でマイナスになったが、今後も内需主導の緩やかな回復が継続するから大丈夫」って、一体、こんなアホな話を誰が信じるというのだろう。
そもそも、モロに増税の影響が出ていることはあきらかで、今回の増税でもっとも深刻な結果を打ち出しているのは、GDPの約6割を占める個人消費だ。実際、「民間最終消費支出」(実質)は、昨年7〜9月が0.4%だったのに、増税後の昨年10〜12月はマイナス2.9%まで一気に落ち込んでいるのである。だが、この個人消費の大幅下落も安倍首相は「台風や暖冬のせい」と言うのである。
しかし、それは大嘘だ。17日の衆院予算委員会で質疑に立った野党統一会派の馬淵澄夫衆院議員は、昨秋の台風災害に遭遇していない近畿や四国でも大幅に消費が落ち込んでいることを指摘。また、暖冬についても、中里透・上智大学准教授は〈暖冬が消費に影響を与えることがあるとしても、それは冬物衣料など一部の範囲にとどまり、消費全体の動きは気象の状況以外の要因から大きな影響を受ける可能性がある〉としている(「SYNODOS」19日付)。
西村康稔再生担当にいたっては「12月は天皇陛下の誕生日や土日の関係で祝日が2日少なかった」などと強弁しているが、たった2日休日が少なかっただけで消費が一気に落ち込むようなハイリスクな国だというのだろうか。
しかも、安倍首相は増税の景気対策のために、キャッシュレス決済によるポイント還元事業に7000億円も投じたが、キャッシュレス推進協議会がおこなったアンケートでは、売り上げへの効果が「なかった」「あまりなかった」と回答した店舗は計61.3%にものぼっている。