しかも、この流れを作り出し、マスコミ支配をさらに強固にしたのが松本人志だった。当時の「週刊文春」(7月25日発売号)が「松本人志が牛耳る吉本興業の闇」と題する特集で指摘していたように、大崎会長の強権支配を支えてきたのが松本であり、大崎会長と吉本はすべて松本の言いなりという状況ができているのは有名な話。
その松本が自分の言いなりになる体制を守るために「大崎会長が辞めたら僕も辞める」とメディアを恫喝したことで、一気に流れが変わったのだ。しかも、松本は、大崎会長に批判的だった加藤浩次や友近、さらには以前から大崎体制と距離のあるナイナイ岡村、ロンブー淳などにアプローチし、取り込みに動き始めた。
実際、松本は騒動渦中に放送された『ワイドナショー』で、「そこまでいっぱいしゃべったことのない加藤(浩次)ともめちゃくちゃしゃべるようになったし、岡村(隆史)もしゃべりたいと言ってくれている。今までそこまで親しくしてなかった後輩たちとも話が聞けそう」などと、取り込みの成果を強調していた。
また、昨年末には『ワイドナショー2019年末SP』にロンブー淳を呼び、「松本さんが動いてくれたから会社が本腰を入れた」「ある現場で松本とすれ違った時に「大丈夫か?」とやさしく心配された」などと、淳から感謝の言葉を引き出していた。
こうした取り込みの結果、大崎体制に不満を持つ加藤や岡村、淳が完全に体制側に寝返ってしまったのである。
「淳が松本に寝返ったことで、亮の復帰も一気に進み始めた。一方、松本は自分の言うことを聞かず、騒動後も明石家さんまを頼った宮迫に対しては完全に冷酷な対応を取るようになり、宮迫は孤立。スケープゴート化がさらに進んでしまったと言うわけです。今回のワイドショーやスポーツ紙の宮迫叩きは、この流れの延長線上で起きたものでしょう」(週刊誌記者)
ようするに、ワイドショーのコメンテーターや芸人たちはこの間、もっともらしい理屈で、宮迫を批判していたが、裏をのぞけば、ようするに、芸能界の政治力学に従って、力のあるものに尻尾を振り、水に落ちた犬を叩いていたと言うだけに話だったのだ。
爆笑問題の太田光が2日放送の『サンデー・ジャポン』(TBS)で、宮迫とロンブー亮の“明暗が分かれた”という話題の際、「はっきりいうとこれ、吉本内部の話じゃないですか。吉本内部で政治的にどう動いたとか誰が立ち回ったとか、ずーっとそんなことばっかり」と喝破していたが、マスコミの体質が変わらない限り、弱いものだけが叩かれ、大きな悪は何の批判も受けず責任も取らないというグロテスクな芸能界の構造も変わることはないだろう。
(伊勢崎馨)
最終更新:2020.02.06 05:04