2017年、安倍政権は「唯一の戦争被爆国」であるにもかかわらず、国連が採択した核兵器禁止条約の署名を拒否した。明らかに米国の顔色を伺った追従だと考えられるが、安倍首相は施政方針演説でも米国を忖度したのだろう。
しかも、安倍首相は原爆のことを無視しただけではない。坂井さんの思いとは真逆に、「国民一丸」のお題目で、五輪を政権の政策や改憲扇動に政治利用したのだ。
「オリンピック・パラリンピックが開催される本年、我が国は、積極的平和主義の旗の下、戦後外交を総決算し、新しい時代の日本外交を確立する。その正念場となる一年であります」
「社会保障をはじめ、国のかたちに関わる大改革を進めていく。令和の新しい時代が始まり、オリンピック・パラリンピックを控え、未来への躍動感にあふれた今こそ、実行の時です。先送りでは、次の世代への責任を果たすことはできません。国のかたちを語るもの。それは憲法です。未来に向かってどのような国を目指すのか。その案を示すのは、私たち国会議員の責任ではないでしょうか。新たな時代を迎えた今こそ、未来を見つめ、歴史的な使命を果たすため、憲法審査会の場で、共に、その責任を果たしていこうではありませんか」(施政方針演説)
東京オリンピック・パラリンピックと改憲に、いったいなんの関係があるのだろう。共同通信が今月11、12日に実施した世論調査によれば、安倍首相の下での憲法改正に「反対」(52.2%)が「賛成」(35.9%)を大きく上回っている。安倍首相は「憲法審査会を開いて責任を果たす」と言うが、その前に、国民が求める疑惑への「説明責任」を果たすのが筋ではないか。
しかし、施政方針演説をみてもわかるように、安倍首相には、自分に都合の悪い国民の声に耳を傾けようという気は一切ない。政権の正当化と身勝手な欲望を、五輪の政治利用によってゴリ押しすることしか頭にないのだ。
繰り返すが、いまこの国では、あらゆる政権の不祥事や問題が消し飛ばされ、いやがおうにも首を縦にふらねばならないよう誘導されかけている。「国民一丸」なるスローガンのもと、不都合なことは隠され、事実は捻じ曲げられる。このままでは、東京五輪は「平和の祭典」どころか、「安倍首相のための祭典」になってしまうだろう。
(編集部)
最終更新:2020.02.04 12:21