とくに気になるのが、鈴木直道北海道知事だ。先週、「週刊新潮」(新潮社)が「IR汚職で特捜部が狙う本丸は菅官房長官」だとして、法曹関係者のこんなコメントを掲載していた。
〈「すでにIR議連幹部の岩屋前防衛相の名前は浮上していますが、カジノ利権の本丸といえば大阪、横浜、北海道の苫小牧などに関わりを持つ菅義偉官房長官。今回の事件で特捜部が菅長官の周辺にまでダメージを及ぼす可能性はある」
今の段階では留寿都が取り沙汰されているものの、北海道IRの有力候補地と言われていたのは苫小牧である。特捜部が秋元議員の事件に着手する直前の昨年11月末、北海道の鈴木直道知事はIR誘致断念を表明して周囲を驚かせたが、
「この判断の裏には、地検の動きを察知した菅長官周辺で水面下の動きがあったと見られます。菅長官や鈴木知事にとって留寿都はあくまで枠外に過ぎず、本流は苫小牧とそこに連なるIR事業者などです。今回の事件で逮捕された紺野の人脈の一端は、苫小牧にもアプローチしていたことが分かっています」(同)〉
ようするに、菅官房長官─鈴木北海道知事のラインが北海道へのIR誘致に動いており、その周辺が特捜部の本命だというのである。
たしかに、2019年の知事選で鈴木氏を擁立したのは菅官房長官だ。北海道連が推した国交省北海道局長を蹴って、強引に鈴木氏を押し込んだ。
しかも、その裏には、夕張市長として破綻した市の財政を立て直した業績というだけでなく、鈴木氏ならカジノ北海道誘致を推進してくれるという菅官房長官の深謀遠慮があったとささやかれてきた。
「2017年頃には、菅官房長官と鈴木氏の間で知事選出馬が決まっていたという話もあります。2人が頻繁に連絡を取り合い定期的に面会していたというのは知られた話ですが、2017年3月には夕張市長として財政再生計画をまとめた鈴木氏が官邸を訪れ、菅官房長官に報告している。菅官房長官もこのとき定例記者会見でわざわざ鈴木氏について触れ、『これから大いに期待をしたいと思います』と言っていましたから、この時点ですでに知事選出馬が決まっていたと言っていいでしょう」(地元政界関係者)
実際、鈴木氏は知事になった当初こそ、地元で反対の声が大きいことからカジノ誘致に対して慎重な姿勢をとっていたが、裏では誘致計画を着々と進めていた。
しかも、その動きは昨年の途中から露骨になり、北海道新聞によれば、昨年の秋口から〈事務方に誘致を阻む課題を解消するよう求め〉、11月22日の段階では同庁内の打ち合わせで「誘致した方がいいと思っている」と明言したという
ところが、その直後の11月29日、鈴木知事は突如、北海道のカジノ誘致見送りを表明する。まだ秋元議員が逮捕される前だったが、前出の「週刊新潮」記事にもあったように、これは「地検の動きを察知した菅官房長官が一旦引かせた」というのが定説となっている。しかも、これは「延期」でしかなく、菅官房長官と鈴木知事はいまもIR 誘致を諦めず、水面下で準備を進めているともいわれる。
IRの開設地については、国が最大3カ所のIR開設地の区域整備計画を認定する予定となっていたが、ここにきて3カ所の選定を2カ所にし、残り1カ所はその後で選ぶという案が浮上。誘致見送り表明の直前に鈴木知事が「菅義偉官房長官からこの話をされ、賭けていた」と、道幹部が証言しているのだ(北海道新聞2019年12月28日付)。