首相官邸HPより
森友公文書改ざんの反省はおろか、この国の公文書管理の実態はよりひどくなっていることがはっきりとした。菅義偉官房長官が4日午前におこなわれた定例記者会見で「桜を見る会」名簿の破棄問題にからみ「バックアップデータは行政文書ではない」と言い出したからだ。
「桜を見る会」の招待者名簿をめぐっては、安倍首相が2日の参院本会議で「シンクライアント方式で端末にデータは保存されておらず、サーバのデータを破棄後、バックアップデータの保管期間を終えた後は復元は不可能だとの報告を受けている」と答弁。これには「わかって言ってるのか?」「シンクライアントなら絶対にバックアップがあるはず」という意見がSNS上に溢れたが、一方で政府はバックアップデータが最大8週間保存されていたことを認めた。
これがどういうことかというと、内閣府は5月21日の衆院財務金融委員会で招待者名簿について「すでに廃棄した」と答弁していたのだが、実際にはこの時期にはバックアップデータが残っていたのだ。
そして、この問題を追及された菅官房長官は、4日午前にこう言い出したのである。
「内閣府からは、バックアップファイルは一般職員が業務に使用できるものではないことから、組織共用性に欠いており、行政文書に該当しないという説明を受けている。なお、情報公開・個人情報保護審査会の答申では、情報公開請求の対象となる電磁的記録とはそれを保有する行政機関において通常の設備・技術等によりその情報内容を一般人の知覚により認識できるかたちで提示することが可能なものに限られると解するのが相当であるとされているところ。ですから、行政文書には該当しない」
はっきり言って滅茶苦茶だ。もっともらしく御託を並べているが、今回「廃棄した」と言い張っている内閣府とりまとめの招待者名簿は、内閣府が行政として作成し、保有していた行政文書であることは間違いない。なのに、電子データを削除した途端、バックアップが残っていてもそれは行政文書じゃなくなる、と菅官房長官は主張しているのである。
無論、これには批判が噴出。しかも、菅官房長官が論拠として挙げた情報公開・個人情報保護審査会の委員を務めたこともある森田明弁護士までもが菅発言に反論をおこなっているのだ。
「政府はバックアップデータについて『一般職員が業務に使用できないので行政文書には当たらない』としているが、組織が作成し、管理している以上は行政文書として扱われなければいけない」(毎日新聞Web版12月4日付)
あまりに常識的な指摘だが、実際に菅官房長官の主張にさっそく矛盾が出てきた。5日午前の定例記者会見では、毎日新聞のアキヤマ記者から「バックアップデータが復元されたものは公文書になるのか」という質問が出たのだが、菅官房長官は「少々お待ち下さい」と言って官房スタッフのほうをチラ見。スタッフからメモを受け取ると、こう読み上げた。
「災害などのあとに復元されたものは公文書になるということ」
災害が理由で復元された場合は行政文書で、それ以外は行政文書じゃなくなる……って、その線引きはどこで定められたもので、何を根拠にしているというのだろう。だいたい、間違って廃棄された場合などはどうなるのか。すぐさま毎日新聞のアキヤマ記者がそうした質問をおこなったが、しかし、この問いに菅官房長官は「仮定(の質問)には答えを控える」と言って回答を拒絶したのだ。