じつは、9月28日におこなわれた野党合同ヒアリングでも、民間試験の採用にあたって語学力の国際標準規格であるCEFRに対応しているか確認をおこなう文科省の「英語の資格・検定試験とCEFRとの対応関係に関する作業部会」のメンバー8人中5人が、ベネッセコーポレーションや日本英語検定協会、ケンブリッジ大学英語検定機構といった民間業者の職員だったことが発覚。しかも、これらの業者は民間試験の実施団体に選ばれているのだ。
民間試験として採用されるかどうかにおいてもっとも重要なCEFRとの対応確認を、民間試験で儲かることが確実の民間業者がおこなっていた──。その上、導入延期を決める直前におこなわれた10月30日の衆院文科委員会では、民間試験の活用を議論した文科省の「検討・準備グループ」は当初非公開でおこなわれており、議事録も第1回から9回まで公開されていないと共産党の畑野君枝議員が指摘。「(検討・準備グループの)構成員のほかに、協力や意見を求めた関係者がいるのかということも含めてあきらかにしていただきたい」と追及し、萩生田文科相は「持ち帰る」「一度引き取らせて」と答弁するにとどまっていた。
さらに、英語民間試験導入の大本は、2012年に安倍総裁が自民党内に設置した教育再生実行本部が「大学入試にTOEFL導入」を打ち出したことにあるが、このTOEFL導入に熱心だった当時の本部長・遠藤利明議員は、小中高校の英語教育強化のための外国語指導助手(ALT)利用の旗振り役でもあり、民間のALTを利用する自治体への補助制度が導入、国費が投入されるようになった。しかし、じつは遠藤議員がALT派遣会社の創業者から計955万円もの個人献金を受け取っていたことが2016年に発覚している。
はたして、民間試験導入にいたるプロセスで、一体何がおこなわれていたのか。そこにどんな人物がかかわっていたのか……。つまり、今後国会で追及がつづけば、加計学園問題を彷彿とさせるような政治家による利益誘導疑惑として問題がさらに拡大する恐れがあったのだ。そうなれば、「身の丈」発言にくわえて萩生田文科相の責任追及は激しくなる。火が大きくなる前に、安倍官邸は萩生田氏を守るべく、導入延期を決定したのである。
だが、民間試験導入延期を決めたからといって、これで終わる問題ではない。実際、英語民間試験導入だけではなく、数学や国語の記述式テストも大きな問題が指摘されており、大学共通テストの2020年度実施の中止を求めるネット署名は5万筆を達成しそうな勢いになっている(ちなみに、記述式問題の採点はベネッセグループ傘下の学力評価研究機構試験に委託されることが決まっており、事業者を決める一般競争入札による落札額は約61億6000万円となっている)。さらに、どのようにして英語民間試験導入が決まったのか、そこに政治家と民間業者の癒着はなかったのか、あきらかにしなくてはならないだろう。
(編集部)
最終更新:2019.11.05 12:24