だいたい、英語民間試験導入の延期を決定したのは、萩生田氏の決断などではなく、官邸の決定だった。しかもその理由は「萩生田氏を守る」ためだ。
現に、毎日新聞Web版1日付記事では、延期決定にいたった理由を自民党文教族議員や官邸周辺関係者がこう証言している。
「萩生田氏は安倍晋三首相の側近中の側近。野党は政権に最もダメージを与えられる萩生田氏を攻め、逆に官邸は萩生田氏が次のターゲットにされるのを嫌った」
「萩生田氏を守るために、試験見直しを野党に差し出した」
萩生田文科相が英語民間試験導入の延期を発表したのは今月1日だが、その前日には公職選挙法違反疑惑によって河井克行法相が辞任し、その6日前には菅原一秀経産相も辞任。当然、官邸は“辞任ドミノ”に警戒を強めていたが、なかでも安倍首相が危機感を募らせたのが萩生田文科相の「身の丈」発言だった。
言うまでもなく、萩生田文科相は安倍氏が第一次政権を放り投げ自民党内で求心力を失った時期においてもずっと“忠犬”として尽くしてきた側近中の側近だ。ときには安倍首相の意向に沿って在京キー局に恫喝文書を送りつけたり、ときにはネトウヨネット番組『真相深入り!虎ノ門ニュース』(DHCテレビ)で「消費増税の延期」に言及し衆院解散・総選挙の可能性までちらつかせて観測気球をあげるなど、安倍首相の手となり足となってきた。しかも、萩生田文科相は自身の事務所で教育勅語を掛け軸にして掲げていたと伝えられているように、安倍首相が血道を上げる戦前回帰と“偏向”教科書批判に同調し、一体となって教科書制度の改悪を進めてきた歴史修正主義者である。安倍首相が萩生田氏を文科大臣に登用したのも歴史修正と愛国教育の実現のためであり、実際、「あいちトリエンナーレ」の補助金打ち切りを決定して事実上の検閲をおこなうなど、萩生田氏は安倍首相の期待に見事に応えてきた。
だが、もし萩生田文科相の「身の丈」発言にさらなる批判が高まれば、辞任ドミノが起こりかねない。しかも、すでに国会では、英語民間試験導入をめぐって、核心に迫る追及が本格化しそうな気配があった。
それは、英語民間試験の実施団体である民間業者への“利益誘導”疑惑だ。じつは、『モーニングショー』では、田崎氏もこう口にしていた。
「英検とかベネッセにしてみれば、受験生っていうのはだいたい50万人なんですね。で、2回かけると100万人なんですよ。100万人の需要がバーンと生じるわけ。誰が得をするんだ、っていう。その団体ごとにおそらくね、政治家が付いているんですよ。裏で」