しかも、安倍政権にこうした現状を改善しようという姿勢はない。現に、麻生太郎財務相は昨年、福岡市長選の街頭演説で北橋健治・北九州市長を俎上に載せ、「(北橋市長は)学歴はいいよ、人の税金を使って学校へ行ったんだから。東京大学出てるだろ」などと発言、教育への公的支出を批判してみせたことは記憶に新しい。
だいたい、来年4月からの高等教育無償化も、授業料が事実上無償化される対象は住民税非課税世帯(年収約270万円未満)でしかなく、「高等教育は無償教育の漸進的な導入によってすべての者に対して均等に機会が与えられるものとすること」という国連人権規約からかけ離れている。その上、高等教育無償化の実施によって、国立大ではこれまで授業料減免や減額の対象になっていた中所得世帯が外れるため、学部生の半数以上にあたる2万4000人が支援を受けられなくなる、あるいは支援額が減少することになる。
また、消費税率10%への引き上げと同時に実施された「幼児教育・保育の無償化」にしても、認可保育所では無償化に必要な費用4650億円のうち約半分が年収640万円以上の世帯に使われ、住民税非課税世帯に使われるのはたったの1%程度。つまり、高所得層優遇の政策になっているのだ。
家庭の経済状況による教育格差を是正するために必要な教育への公的支出もケチる上に、財務大臣が公的支出を公然と批判し、教育への投資としながら高所得層を優遇する──。今回、萩生田文科相が地域格差や経済的格差により著しい差が生まれる入試制度を推進し、経済的に苦しい家庭の受験生に「身の丈にあった受験を」と言い放ったことも、安倍政権の弱者に冷酷な姿勢を考えれば当然の出来事だったのだろう。つまり、年金老後2000万円問題と同じで、「国に頼るな。自助努力・自己責任でどうにかしろ」ということだ。
だが、家庭の経済状況という自分ではどうにもできない問題を高校生に押し付ける無責任な萩生田氏こそ、大臣が「身の丈」に合っていないのだ。菅原一秀氏が経産相を辞任したばかりだが、この暴言によって大臣としての資質がカケラもないことが萩生田氏もはっきりした。萩生田文科相の辞任要求、そして「大学入学共通テスト」の導入を即刻中止させなければいけない。
(編集部)
最終更新:2019.10.26 01:37