これで文化庁がかなりグラグラしたのは間違いない。実際、“安倍政権御用紙”の産経新聞も〈元慰安婦を象徴する「平和の少女像」や昭和天皇の肖像を燃やすような映像の展示に批判が高まったことなどを受け、交付が適切かどうか精査していた〉と報道(産経ニュース)。また共同通信も〈菅義偉官房長官が記者会見で「事実関係を精査して対応する」と補助金不交付の可能性に言及すると「この案件は官邸マター」(文部科学省幹部)との認識が一気に広まった〉と伝えている。
さらに、安倍首相の側近中の側近である萩生田光一文科相が直接、動いた可能性も十分ある。現段階では、萩生田文科相は8日の囲み会見で、「私から文化庁に何かを指示したりということはありません」などとシラを切っていたが、萩生田氏は安倍首相の親友が理事長をつとめる学校法人加計学園の獣医学部新設をめぐっても、大きな役割を演じながらシラを切り通した。
たとえば、文科省が公開したメール文書でも、萩生田氏は事実上の「京都産業大学外し」を内閣府に指示していたと名指しされているし、NHKがスクープした文部省の内部文書「10/21萩生田副長官ご発言概要」でも、萩生田氏が文科省に対し「官邸は絶対やると言っている」「総理は『平成30年4月開学』とおしりを切っていた」などと“総理案件”であることを伝えていたことが明らかになっている。他にも、安倍首相の意向を受けるかたちで、省庁への介入、さらにはマスコミ報道に対する“圧力文書”を出したこともある。
その萩生田氏が内閣改造で文科大臣に就任したとたん、所管の文化庁が補助金取り消しを決定したのだ。関係がないと考えるほうが無理だろう。
「実際、萩生田氏は取り消しをめぐる会見で、主催側が少女像展示等が批判を受ける可能性を知りながら文化庁に『相談がなかった』ことも不交付の理由にするなど、露骨に検閲を正当化していましたからね。少なくとも、萩生田氏が大臣に就任したことが、文化庁の背中を押したことは間違いない」(全国紙社会部記者)
いずれにせよ、この補助金不交付問題は、政治権力が事実上の検閲を行い、表現の自由を侵害したという重大な問題だ。この前例が踏襲されれば、政権に不都合な内容を含む展示会や表現行為は今後、どんどん潰されてしまうだろう。あまりに不自然な不交付決定の経緯に、政権幹部の関与があったのか。全メディアが徹底して追及していく必要がある。
(編集部)
最終更新:2019.10.18 06:54