すがわら一秀オフィシャルサイトより
原発マネー還流問題で、稲田朋美・元防衛相につづき、世耕弘成・前経産相も福井県高浜町の森山栄治・元助役を雇用していた会社の社長から600万円もの献金を受けていたことが発覚した。疑惑解明には国会での徹底追及が求められるが、しかし、そんな最中に、よりにもよって原発行政を所管する経産大臣に、重大スキャンダルが持ち上がった。
それは、菅原一秀経産相の「有権者買収」と「秘書給与ピンハネ」というダブルの疑惑だ。
きのう10日発売の「週刊文春」(文藝春秋)によると、菅原氏は選挙区内に居住する有権者に対し、長年にわたって盆暮れに高級メロンやカニ、いくらなどを贈答。贈答品の費用は年間200万円以上に及んでいたというが、そうした支出の大半は政治資金収支報告書には記載されていないという。
さらに、菅原氏の元ベテラン秘書は、こんな衝撃的な告白をおこなっている。
「私が秘書として仕えることになった直後、彼は有権者の集会に顔を出そうとした私に茶封筒の束を渡し、『これ、配ってきて』と言ったのです。中には五千円札。そんなことがずっと続いていたのです」
記事によると、菅原氏と秘書らは選挙区である練馬区内で催される町会の新年会や自治会の夏祭りなどで5000円を入れた茶封筒を配布してきたことも証言されている。無論、これらも政治資金収支報告書には記載されず、“裏帳簿”で処理していたというのだ。
選挙区内の有権者に対して贈答品を送ることはもちろん、現金を配布することは、有権者を買収する行為であり、公職選挙法で禁止されている寄附行為にあたる。しかも、こんなことを菅原氏は長年にわたっておこなってきたというのである。
言っておくが、これは大臣辞任どころか議員辞職に値する重大な問題だ。実際、たとえば小野寺五典・元防衛相は、1999年に選挙区内の有権者宅約500件に名前入りの線香セット(約1000円相当)を配ったことが公選法違反と認められ、議員辞職している。
しかし、菅原経産相の疑惑はこれだけにとどまらない。なんと、秘書に対して菅原氏は“上納金”をおさめるよう要求していたというのだ。元若手秘書は、こう告発している。
「私設秘書だった私はある日、菅原氏から『公設秘書にしてやる』と言われたのですが、同時に『国からの秘書給料は四十万円程度だ。毎月十万円は事務所に入れなさい』と寄附を要求されました」
また前出の元ベテラン秘書も40万円の寄附をおこなったというが、その後も菅原氏は「うちの事務所の事情わかるでしょ。寄附してくださいよ。領収書も出すから」と言いつづけたのだという。さらにこのベテラン秘書によると、別の若手秘書も、私設秘書から公設秘書になると差額分を支払えと菅原氏から要求され寄附をおこなったというが、それは政治資金収支報告書には記載されなかったという。
「国会議員の秘書の給与等に関する法律」第21条の3には、〈何人も、議員秘書に対して、当該国会議員がその役職員又は構成員である政党その他の政治団体又はその支部に対する寄附を勧誘し、又は要求してはならない〉とある。つまり、秘書に対して寄附を強要した菅原氏の行動は違反行為にあたる。しかも、その寄附を収支報告書に記載せずに“裏金”として処理していたとなれば、政治資金規正法の不記載にあたる可能性もある。
有権者にカネをばらまき、立場の弱い秘書からはカネを巻き上げる──。そんな人物が原発マネーにメスを入れることなど、できるはずがない。
そもそも、菅原氏をめぐってはスキャンダルや問題行為が多すぎて、安倍首相が経産大臣に抜擢したこと自体がどうかしているとしか思えない人事だった。