だとすれば、NHKの経営委と上田会長が郵政側の「申し入れ」に簡単に応じたのは、背景に総務省、そして菅官房長官の存在を見ていたからだと考えるのが妥当だろう。
「昨年11月7日に日本郵政の鈴木副社長が送った文書には、自分が今でも放送事業に影響力を持つ元総務相事務次官であることを強調しながら、NHK経営委に対して『早速に果断な措置を執っていただき篤く御礼申し上げます』と記されていました。つまり、上田会長が異例の対応をしたのは、日本郵政グループそのものというよりは電波の権限を持つ総務省と政府だったからではないか。ただでさえ、高市大臣の例の“電波停止”発言に象徴されるように、政権はNHKなど放送局の首根っこを掴もうと牽制を繰り返していますが、かんぽ不正問題は郵政民営化の“膿”そのものですから、当然、政府批判の世論に傾きかねない。総務省だけでなく官邸も具体的に圧力を後押しした可能性もありえます」(全国紙社会部記者)
いずれにしても、かんぽ生命の不正販売をめぐるNHK経営委の報道介入問題が物語っているのは、報道の自主自律の原則を守るでもなく、不正を追及する現場を守るでもなく、ましてや視聴者の知る権利を守るものでもない、NHK上層部の腐りきった体質だ。それはすなわち、安倍政権が繰り返してきた圧力によって、NHKがとことん骨抜きにされていることを意味しているだろう。
繰り返すが、この問題はNHK内部だけの話ではない。NHKでは、たとえば森友学園問題に関するスクープを全国放送しなかったり、翁長雄志・前沖縄県知事の葬儀での政権批判の怒号を報じなかったり、国会報道がまるで安倍政権のPRの様相を呈したりと、数え切れぬほど安倍政権忖度の実態が剥き出しになっているが、その背後では常に“官邸からの圧力”が取り沙汰されてきた。今回の問題は毎日新聞が先陣を切って報じているが、ここでうやむやにしてしまっては、必ず同じような報道への介入がNHK以外でも繰り返される。それは、安倍政権によって、わたしたちの「知る権利」が奪われるということに他ならない。全メディアが徹底的に追及していく必要がある。
(編集部)
最終更新:2019.09.28 12:59