しかし、連戦連勝の菅氏、三浦氏がこうした形で敗北した最大の原因はやはり、自民党の利益誘導型選挙への埼玉県民の意思表示だろう。
大野陣営が強調したのは「県民党 対 中央」。安倍政権とのパイプの太さをアピールしながら公共事業推進姿勢を打ち出す青島氏に対して、公共事業に抑制的な上田清司前知事の4期16年にわたる県政継承を大野氏は訴えたのだ。
「上田知事が引退表明をして以降、自民党県議団の中で県庁建替えを進める動きが活発化しました。必要な費用は400億円以上と見積もられていて上田県政では進まなかったのですが、16年ぶりの県政奪還の可能性が出て来た途端、具体化し始めたのです。県知事選の争点の一つともなりました。青島氏が『できるだけ早期に』と訴えたのに対し、大野氏は『今すぐの着工反対』という慎重姿勢で、両候補の立場の違いは明らかでした」(地元記者)
新潟県知事選でも北海道知事選でも、自公推薦候補は中央とのパイプの太さを強調、中央から補助金(税金)を引っ張ってくる利点を訴えた。同じ手法を埼玉県知事選でも繰り返したといえるが、埼玉県民は中央直結型の土建県政復活よりも、上田県政継承の県民党候補を選んだといえる。これまで有効だった常套手段が今回、「県民党VS中央」の構図に持ち込まれて効力を失ったようにもみえるのだ。
菅氏の勝利伝説が崩れた敗因は他にもある。懇意な佐藤浩・創価学会副会長を通じた「創価学会員フル稼働」が作動しなかったというのだ。
「今回、夏休み期間であったことから、創価学会がほとんど動かなかったようです」(創価学会事情通)