「重要地方選挙に関わった時の勝率抜群」という“菅官房長官神話(勝利伝説)”が崩れ始めた。与野党激突の構図となった「埼玉県知事選(8月25日投開票)」で、菅氏が2回応援演説をして、現地には菅氏の懐刀の“官邸御用達選挙プランナー”の三浦博史氏が張り付いたのに、自公推薦候補の青島健太氏(元スポーツライター)が野党4党支援の大野もとひろ氏(国民民主党前参院議員)に破れてしまったのだ。
しかし翌26日の官房長官会見で菅氏は、自らが精力的にテコ入れをしたのに、まるで他人事であるかのような紋切型のコメントに始終した。
――(東京新聞の中根記者)昨日投開票された埼玉県知事選について伺います。選挙は立憲民主党や国民民主党など野党4党が支援した大野もとひろ氏が、自民党と公明党が推薦した青島健太氏らを破って初当選しました。今回の知事選挙は10月の参議院埼玉選挙区の前哨戦ともされましたが、選挙結果に対する受止めをお願いします。
菅官房長官 いつもの通りでありますけれども、地方自治体の選挙はその地域の住民の皆様方がその地域の課題をめぐって投票を行うものであり、政府としてコメントすることは控えたいと思います。
しかし菅氏が平静を装っても、「知事選敗北、自民に危機感 埼玉」(朝日新聞8月27日)や「戦犯は菅長官か 埼玉県知事選で自公が想定外敗北の衝撃」(日刊ゲンダイ8月26日)と報じられたように、今回の“埼玉ショック”が安倍政権を直撃したのは確実だ。
何しろ、当初は知名度の高い青島氏がトリプルスコアでリード。そして枝野幸男・立憲民主党代表(衆院埼玉5区)のお膝元での県知事選勝利で野党第一党にダメージを与えるべく、菅氏をはじめ岸田文雄政調会長や甘利明選対委員長ら自民党大物議員が続々と現地入りし、しかも黒岩祐治・神奈川県知事や森田健作・千葉県知事まで応援に駆け付ける総力戦を展開したのに、支持率低迷の国民民主党前参院議員の大野氏にまさかの敗北を喫したのだ。
一強多弱状態を謳歌してきた安倍長期政権の屋台骨(勝利の方程式)が崩れた形だが、もう一つ、埼玉県知事選の結果で注目すべきは、重要選挙での連戦連勝を演出してきた菅氏御用達の選挙プランナー・三浦博史氏が敗れたことだ。
同じく与野党激突となった去年6月の新潟県知事選では「自公推薦候補敗北の場合、『森友加計にまみれた安倍首相では選挙を戦えない』と声が党内で強まって石破茂氏支持が広がり、総裁選3選に黄信号がつく」と言われたが、三浦氏が選挙参謀として現地に張り付き、菅氏と懇意な佐藤浩・創価学会副会長を通じて創価学会員もフル稼働することで、野党統一候補を打ち破った。
危機管理能力抜群の菅氏が安倍首相が窮地に陥るのを未然に防いだ形だが、この新潟県知事選勝利に貢献したのが三浦氏だった。