今回の本は、ノンフィクションライターの小松成美氏による「事実に基づいた小説」という不思議な形態をとっているが、たとえライターの協力を得るとしても「浜崎あゆみ」名義で出すという方法もあり、そうしていたら、今以上に売れていただろう。それをしていないのは、浜崎が主体の企画でもなければ、出版じたい浜崎の本意ではないからではないか。
ただし、元恋人で盟友であり現在も後ろ盾である松浦氏の意向をむげにもできず、こういう形で出版した。そういうことではないのか。
実際、松浦氏がSNSに寄せられたこの本の感想をリツイートしたり返信しているのに対し、浜崎は完全に沈黙を保っている。
だいたい、この本、松浦氏を美化しすぎているキライがあるが、それも松浦氏のPRの一環と考えれば説明がつく。いきなり浜崎の母親に交際宣言する場面や、「この手を離すなよ」「俺を信じろ」とあゆに語りかける場面など、松浦氏をカッコよく書きすぎていて、正直さむいくらいだ。
小室ブームでエイベックスが勢いづいていた1999年にも、松浦氏の半生を描いた映画『ドリームメイカー』が、当時大人気だったDA PUMPのISSA主演で公開されているが、もともと松浦氏は自己顕示に躊躇がない人物。
また、盟友の見城徹氏と同じように、安倍政権にも急接近している。とくに菅義偉官房長官との親交は有名で、昨年の沖縄県知事選を前に、安室奈美恵が翁長雄志前知事の追悼コメントを発表した際は、菅官房長官が松浦氏を通じて安室の発言を封じさせようと動いたという話もある。
“裏方”として成功し、金をつかんだ人物たちが今度は達成できなかった主役としての自己顕示欲に取り憑かれ、自ら自伝を出し、政治権力にすりよっていく。露骨で下品なコンテンツばかりが流通するようになったこの国のメディアだが、経営者も相当に品がなくなったと言うほかはない。
(本田コッペ)
最終更新:2019.08.26 02:44