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朝ドラ『なつぞら』が宮崎駿・高畑勲も闘った「東映動画・労使紛争」を矮小化! 労働組合の意義、会社との対立をなかったことに

NHKオンラインより


 先週の平均視聴率で20.2%を叩き出した、100作目となるNHK連続テレビ小説『なつぞら』。主演に広瀬すずを据え、戦争孤児の主人公・なつが、引き取られた北海道で開拓者精神を学び、上京した東京でアニメーターとして活躍する物語だ。

 しかも、なつのモデルとなっているのは、女性アニメーターとして先駆的存在の奥山玲子氏であり、奥山氏が入社した東映動画(現・東映アニメーション)といえば、後にスタジオ・ジブリで数々のアニメーション映画を世界に発信してきた高畑勲と宮崎駿という2人の巨匠も在籍していたことでも知られる。高畑・宮崎両監督をモデルとする人物も『なつぞら』には登場するが、高畑・宮崎両監督がこの東映動画で労働組合の活動を通じて関係を深めていったことは有名な話。一体、『なつぞら』では、こうした歴史的な出会いを生んだ労働組合をどう描くのか、放送前から一部で注目が集まっていた。

 しかし、それは想像をはるかに超える“残念”っぷりだった。そして、先週放送の『なつぞら』での労働組合の描き方をめぐって、ネット上で疑義の声があがっているのだ。

 まずは問題となったシーンを振り返ろう。まず、なつは、勤務する「東洋動画」で演出家の坂場一久(中川大志)と職場結婚し、にんしん。しかし、直前には同僚の茜(渡辺麻友)がしゅっさんを機に退職か契約社員かの選択を迫られ退職したばかり。しゅっさんしてもアニメーターをつづけたいと言うなつの思いに対し、同僚たちは「産後も契約に切り替えないで」と社長に直談判に向かう……という展開だった。

 なつを筆頭に、社長室に詰めかける大勢のアニメーターたち。そこで社長はこう言う。

「君はなんなんだ。これは一体どういうつもりですか? 他の人を巻き込んで、まるで組合のデモじゃないですか」

 すると、なつの上司で作画課長の仲(井浦新)は「そう思っていただいても差し支えありません」と返答。社長が「いつから組合員になったんですか?」と詰め寄ると、今度は映画部長の井戸原(小手伸也)がこう言い放つのだ。

「これは組合を超えた我々ひとりひとり、個人的な支援と考えていただいて結構です」

 組合を超えた個人的な支援──。“仲間たちの団結”という美談のようにも映るが、労働組合の存在をなきものにした挙げ句、労働者の権利を訴える組合の連帯を一段下に落とし込んでいるのだ。

 しかも、この描写が問題なのは、主人公・すずのモデルである奥山氏も、高畑・宮崎らとともに労働組合で活動、会社の女性差別と闘い、その権利を掴み取った人物だったということだ。

 この「これは組合を超えた我々ひとりひとり、個人的な支援」という台詞には、コラムニストの斎藤美奈子氏も21日付の東京新聞のコラム欄で〈何それ。労働組合の団体交渉ではないと? 主人公のモデルとなった奥山玲子は東映動画の組合活動も頑張った人なのに?〉と批判したが、実際はどうだったのか。『日本のアニメーションを築いた人々』(叶精二・著/若草書房)におさめられた奥山氏へのインタビューから紐解こう。

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