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ブラ弁は見た!ブラック企業トンデモ事件簿100 第38号

パワハラ対策の法整備が不十分な日本で労働者をどう守るか? さいたま市で職員がパワハラ受け自死した事件では…

 本判決は、まずパワハラの事実の存否について、地裁の事実認定を一から詳細に認定し直し、市側の反論を詳細に否定した上で、平成23年4月21日ころの暴力及び同年7月末頃まで、職場における優越性を背景とした暴言等のパワハラを継続的に受けていたものと推認することができるとした。

 そして市の責任を認定するに当たり、本判決で出された規範の一つ目は、①『安全配慮義務には、精神疾患により休業した職員に対し、その特性を十分理解した上で、病気休業中の配慮、職場復帰の判断、職場復帰の支援、職場復帰後のフォローアップを行う義務が含まれる』というものである。

 この規範によれば、使用者に対して、精神疾患に関する特性の理解を促進し、単に労働者を休職させるだけでは足りず、復職後に至るまで適切な措置をとることを求めたことは、昨今急増している精神疾患の労働者を雇用する使用者にとって、非常に慎重な対応が求められることとなるのではないだろうか。

 また、②職場環境調整義務のひとつとして、使用者にパワハラを防止する義務を課し、特に『パワハラの訴えがあったときには、その事実関係を調査し、調査の結果に基づき、加害者に対する指導、配置換え等を含む人事管理上の適切な措置を講じるべき義務を負う』とした。

 この規範によれば、労働者としては、パワハラがあった場合には、使用者に対してその事実を訴えていくことで、適切な措置を求めることができるということに繋がるのではないだろうか。

 本件に関しては、職場復帰後のフォローアップという観点からは、市において、Aの休職等の情報を共有することが望まれたが、職場復帰後の状況の詳細が不明な本件においては、直ちに安全配慮義務違反とはいえないものの、Aからのパワハラの訴えに対し、事実関係を調査して適切な措置を講じる義務があるのに、事実確認を行わず、その後も放置したとして、職場環境調整義務違反を認めた。更に、Aから体調不良・自殺念慮等の旨を伝えられて以降、主治医や産業医等に相談するなど適切な措置を怠り、Aの精神状況を悪化させ、うつ病の症状を増悪させたのであるから、市はこの点においても、安全配慮義務違反があると判断された。

 現状でもパワーハラスメントは違法である! 労働者はパワハラに負けず、きちんと事実を訴えていくべきと考える。

【関連条文】
労働者の安全への配慮義務 労働契約法5条

(弁護士 金子直樹/早稲田の杜法律事務所 http://wasedanomori.com
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ブラック企業被害対策弁護団
http://black-taisaku-bengodan.jp

長時間労働、残業代不払い、パワハラなど違法行為で、労働者を苦しめるブラック企業。ブラック企業被害対策弁護団(通称ブラ弁)は、こうしたブラック企業による被害者を救済し、ブラック企業により働く者が遣い潰されることのない社会を目指し、ブラック企業の被害調査、対応策の研究、問題提起、被害者の法的権利実現に取り組んでいる。
この連載は、ブラック企業被害対策弁護団に所属する全国の弁護士が交代で執筆します。

最終更新:2019.08.19 11:49

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