というのも、幻冬舎の編集者で、夏野氏と一緒に『AbemaPrime』(AbemaTV)の月曜コメンテーターを務めている箕輪厚介氏が、「ネット党首討論」の約2週間前の6月14日、Twitterに〈権力者飲み!!権力こそ自由!〉と、反吐が出るような投稿をおこなったのだが、このとき箕輪氏は一枚の写真をアップ。その写真には、箕輪氏や藤田晋・AbemaTV社長、夏野氏らと並んで、自民党の平将明・元内閣府副大臣がにこやかに写っていたのだ。
平議員といえば、J-NSC(通称ネトサポ)を率いる自民党ネットメディア局長を務めていた際には、自民党のネット番組でネトウヨさながらに野党への罵倒を繰り出し、2017年におこなわれた衆院予算委員会のライブ配信では「(野党の質問に答えることは)与党の野党に対するおもてなしなんですよ。オ・モ・テ・ナ・シ!」「料金タダ!スマイル0円!なんてやってると、受け取るほうは当たり前で権利だと思い始める。権利じゃないんです。配慮なんです」などと暴論を主張したこともあるような人物だ。
ちなみに、今回と同じように2013年にニコニコ生放送でおこなわれた党首討論では、当時のネットメディア局長である平井卓也・現IT担当相が、福島瑞穂議員の発言中に「黙れ、ばばあ!」、安倍首相の発言に「あべぴょん、がんばれ」などと書き込んでいたことが発覚する“事件”も起こっている。自民党にとってニコニコでの党首討論は、安倍首相の賛美と野党ディスを展開できる、絶好の場にされているということだ。
にもかかわらず、「ネット党首討論」を目前に控えたなかで、党首討論を主催するドワンゴの社長であり司会の夏野氏は、ネトウヨ集団であるネトサポのトップとしてネット対策をこのあいだまで取り仕切ってきた自民党の議員と、仲良く「権力者飲み」していたのである。
ようするに、党首討論の直前に特定政党の要人と会食する司会者に「公平さ」などあるわけがなく、夏野氏が安倍首相をアシストして野党を貶める発言を連発したのも、当たり前の話だと言えるだろう。
だが、問題なのは、そんな偏った主催のもとで党首討論がおこなわれていることのほうだ。
もともと、安倍首相にとってニコニコ動画は、自分の支持者が多く集う“ホーム”だと考えているふしがある。実際、「ニコニコ超会議」にも積極的に参加し、その上、「令和」発表後に開いた総理大臣会見でも、質疑応答ではトップバッターでニコニコ動画の記者が指名され、ニコニコの記者は“元号選定で「令和」時代を担う若い世代などのことをどう考えたか”と質問。すると、その回答で安倍首相はこんな発言をおこなっていた。
「ニコニコ動画も既存メディアの発想にとらわれることなく、若者たちならではの柔軟さで多様な番組を生み出して、リアルタイムで個人がコメントを発信できる、新しいメディアの姿をかたちづくられたと、こう思っています」
ドワンゴの不振が伝えられているように、どちらかといえば“オワコン”化が著しいニコニコをわざわざ取り上げて持ちあげる……。さらに、安倍応援団の夏野氏が代表取締役社長となったことで、ニコニコ自体が完全な“安倍応援団メディア”になってしまうのではないか。今回の党首討論での司会ぶりを見て、その危惧の念はさらに高まったと言えるだろう。
(編集部)
最終更新:2019.07.06 12:13