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ブラ弁は見た!ブラック企業トンデモ事件簿100 第35号

“パワハラで鬱”の決定的証拠音声あったのに労基署が1年半も放置! 背景に安倍政権「働き方改革」の欺瞞

 われわれは、決定的な証拠である、8名の上司による5時間にわたるXさんへの糾弾の録音が残っているので、労災が認められるのはそんなに難しいことではなく、時間もそんなにかからないだろうと思っていた。ところが、労災申請から1年半が過ぎても、労働基準監督署からの判断は出なかった。そうして時間が過ぎる間に、Xさんの傷病手当は受給期間が切れてしまい、それからしばらくして、なんと、労災申請を却下する通知がXさんに届いたのであった。

 厚生労働省の内部基準では、精神疾患の労災申請は、半年を目処に判断を出せるようにするべきものとされている。でも実際には、判断が出るまでに1年ほどかかる事例はざらにある。それでも、1年半はいくら何でも長すぎる。しかも、傷病手当の給付が切れてしまった直後に却下通知が来るなんて、すでに会社で十分酷い目にあったXさんにとって、あまりにも残酷すぎる現実であった。

 私は、Xさんを代理して、すぐ異議申立手続である「審査請求」を申し立て、さらにXさんには、労働局への「個人情報開示請求」で、Xさんの労災調査記録を取り寄せる手続きをとってもらった。

 個人情報開示の記録を見て、私は、「なんでこの内容で認められへんねん!」と声を出してしまった。調査記録を見ると、5時間にわたる糾弾の事実のほかに、その糾弾があった日の直前まで、恒常的に1カ月80時間以上、多いときで1カ月100時間以上の長時間残業があったことが記録に残っていた。この長時間労働の事実と、5時間にわたる糾弾の事実を併せて評価すれば、簡単に労災が認められてもおかしくない内容であった。労災手続きの担当官が、この長時間労働の事実の評価を誤ったものとしか考えられなかった。

 審査請求の手続きでは、この長時間労働の事実評価の誤りを指摘する書面を作成して提出した。そして、今年の3月末、ようやくXさんの労災は認められることになった。最初の労災申請から、実に2年半後である。これで、Xさんには労災の給付が出る上に、今後はXさんに対する安全配慮義務違反を根拠に、会社に対し損害賠償請求を行うことも可能となる。会社との交渉は、まだ始まったばかりである。

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