潤沢な政党交付金や使途があきらかにされない巨額の官房機密費を抱える安倍自民党が、金にものを言わせて人気インフルエンサーを巻き込み、公選法違反ギリギリの広告展開をおこなう──。あまりに露骨なこの選挙対策には反吐が出るが、問題は、こうした広告展開が炎上したところで、自民党には何の痛手にはなっていないだろうということだ。
今回の「ViVi」とのコラボは、改元に合わせて自民党がスタートさせた広報戦略「#自民党2019」プロジェクトの一環で、特設サイトでは、『ファイナルファンタジー』のキャラクターデザインを手掛けたことでも世界的に有名な天野喜孝氏が安倍首相を侍になぞらえたイラストを掲載。じつは、この特設サイトが開設された段階から、自民党は今回の「ViVi girls」とのコラボも予告していた。
また、テレビでは、ダンスやBMX、落語やファッションなどさまざまな分野で世界を目指す13〜17歳の十代という十代の表現者たちが登場し、そうした未来ある若者たちの輪に安倍首相が加わり「未来をつくりたい」と宣言するCMが大量に流されているが、この映像を企画・制作したのは映像クリエイター集団である「solo」。昨年ブームを巻き起こしたドラマ『おっさんずラブ』の監督や、アジア、アメリカなど海外でも公開された映画『東京喰種 トーキョーグール』の監督、日清カップヌードルやHONDAのCMなどを手がけた映像ディレクターなどが参加しており、メンバーそれぞれが海外の映画賞・広告賞で評価を受けてきた経歴の持ち主だ。
天野喜孝氏に、気鋭の映像クリエイター集団による演出、インフルエンサー集団である「ViVi girls」とのコラボ……。これだけの人材を集めただけあって、今回の自民党の広告戦略は、大企業による広告展開のようなブランド感と、革新感が漂っている。イラストを用いた大胆なビジュアル使いやおしゃれな映像といったカルチャー路線、インフルエンサーによるイメージの拡散といった手法は若者にはとっつきやすいだろう。
今回、広告展開に批判が集まり炎上しても、それは政治に関心のある層にしか届かない。それこそ、この広告展開に接した自民党が狙っている若いターゲット層は「前向き」「なんか新しい」「おしゃれ」といった“イメージ”を自民党に抱くだろう。いくら自民党の政策とかけ離れたメッセージを発信していても、その問題点が届かなければ、それが「自民党」のイメージを形成してゆくのだ。