このように様々な安倍政権風刺が随所に散りばめられていた『家政夫のミタゾノ』。しかも、今回の作品が素晴らしかったのは、エピソードが直接的でありながら、それをテンポ良く軽妙に描き、見事にコメディとして成立させていたことだ。まさにコメディの神髄を見せてくれたといってもいいだろう。
実際、放送後の評判も上々で、ツイッターでは、〈今日のミタゾノさん、忖度が題材で面白いw〉〈今日のミタゾノさん、データ改ざんに隠蔽、総理の旧友ワード登場で忖度発動すごいw〉〈昨日の家政夫のミタゾノが総理と官房長官の隠蔽、ごまかし、忖度 についてで面白かった〉〈「家政婦のミタゾノ」、『改ざん』『忖度』『トカゲの尻尾切り』『ジャーナリズム』のキーワードが出まくり。テレビ朝日攻めるね笑〉といった感想が投稿され、俳優の城田優もこの回の放送直後に〈“家政夫のミタゾノ” 面白い〉とツイートしていた。
テレビ局は政権批判ができない言い訳として、「ウケないから」などとよく言うが、こうした感想を見ていると、むしろ、視聴者の間には政権批判をしないメディアへのうっぷんがたまっていることがよくわかる。
それは、テレビ局内も同様だ。冒頭でテレビの報道が政権を忖度し、批判報道がどんどん抑えられている現状を指摘したが、なかでもひどいのがこの『家政夫のミタゾノ』の放送局であるテレビ朝日だ。『報道ステーション』や『羽鳥慎一モーニングショー』などニュースやワイドショーは見る影もなくなってしまった。
そのテレビ朝日が今回のような政権を風刺するドラマをたびたびつくっているのは、同局のドラマの現場に、いまの政治や言論状況に危機感を抱く良心的なテレビマンがいることの証明でもある。政権の顔色ばかりをうかがっている報道やワイドショーの人間は、この姿勢を少しは見習ったらどうなのか。
(林グンマ)
最終更新:2019.05.07 12:34