他にも、フランチャイズ加盟店とセブン本部との間では、多くの裁判が起きている。そのひとつが、本部が仕入れている真実の仕入原価を開示していないこと(加盟店オーナーは自分たちが仕入れた段階の仕入原価しか知らない)、本部と仕入先との間の仕入割戻し金(リベート)の全容を本部が開示していないことから、一部をピンハネしているのではないかという疑惑の解明を求めた「ピンハネ」裁判だ。
コンビニエンスストア業界では、加盟店オーナーが本部から紹介されたベンダー(納入業者)から直接仕入れるが、仕入れた商品の代金支払いは本部が代行する。しかし、ベンダーとの詳細な取引資料を本部側は開示せず、元加盟店オーナーなどが「本部に支払った額と本部の取引先への支払額に差がある疑いがある」と、開示を求めた。
最高裁まで争われた裁判では、「(本部は)一定の条件の下で、加盟店経営者に対して報告義務を負う」ことを最高裁が認めたものの、事実関係を精査した差し戻し控訴審(2009年8月25日/東京高裁)では、金額などの開示は認めたが請求書や領収書などの「原資料」の開示は認めなかった。本部の加盟店への報告内容にかかる費用を加盟店負担としている点など問題も残されており、その後も、同種のピンハネ裁判が起こされている。
さらに、今回、注目を浴びている、過酷な奴隷労働を強制する契約実態についても、以前から加盟店オーナーの間から告発の声が上がっていた。事実、過労死や自殺した加盟店オーナーも少なくない。『セブン‐イレブンの罠』(渡辺仁/金曜日)から一例を紹介しよう。
2004年10月に自殺した宮城県のある加盟店オーナーAさん。昔から家業でプロパンガス販売店や酒屋をやっていたAさんは1990年ごろ、土地・建物は自前の「Aタイプ店」を開業した。しっかり者の妻と一緒に店を切り盛りし、当初は順調だったが、近隣にセブン本部にドミナント出店され、経営が傾くようになる。一家の手元に残る年収は200~300万円。折悪しく、娘は大学生、息子は高校生と学費がもっともかかる時期に重なってしまい、Aさんは生活費を稼ぐために夜勤明けにアルバイトもすることになる。
〈夜勤明けに五〇、六〇キロ離れた蔵王まで通い、スキー客誘導員のアルバイトを掛け持ちしていたというのだ。コンビニは年中無休の二四時間営業だ。バイトが欠勤したら急遽、オーナーみずからがシフトに入らなければならない。ふつう、このシフトを回すだけでもクタクタになる。だからコンビニオーナーはストレスや過労で脳卒中になると囁かれている〉(同書より)
精神的に疲労困憊したAさんは売上金の一部を生活費にあててしまった。すると、店舗経営指導員による監視が始まるとともに、「契約を更新しない」ことを幹部から宣告されたのだ。Aさんは「本部からは再契約されないとなったからもう終わりだわ」とオーナー仲間に言った数日後に自宅兼コンビニ店舗の2階階段で自ら首を吊った。