その後も、「生前退位」をめぐる有識者会議では、安倍首相が送り込んだ日本会議系のメンバーが明仁天皇を公然と批判するなど、政権と天皇・皇后との溝はどんどん深まっていった。事実、昨年10月23日に行われた「明治150年」を記念する式典に、天皇・皇后の姿はなかった。この明治日本=大日本帝国を礼賛する政府主催式典は安倍首相の肝いり。前述の西村泰彦次長は「政府からお声がけがなかった」としているが、実際には、欠席には天皇と皇后の強い意向が背景にあったという見方が強い。
「安倍首相も当初は、陛下の周辺に様々なルートを使って働きかけてたいたようですが、最近は懐柔するのを完全に諦め、自由な発言を封じるような動きばかりしていた。毎日新聞のベテラン記者に月刊誌で暴露されていましたが、オフレコの席で天皇を批判するような言動をしていたという話もありました」(前出・宮内庁担当記者)
そんな安倍首相がある時期から期待をかけ、しきりにアプローチしていたのが、皇太子だったという。今度はベテラン皇室ジャーナリストがこう分析する。
「皇太子殿下は波風を立てるのが嫌いな性格ですし、雅子妃は小和田恆元外務省事務次官の娘で、本人もエリート外交官で、政治的には安倍首相の考えに近い可能性がある。しかも、皇太子夫妻は天皇皇后両陛下と距離をとっていますから、安倍首相としては、皇太子夫妻なら取り入れると考えても不思議はない。2016年に外務省出身の小野田展丈氏を東宮大夫にしたのもその一環といわれていますし、ほかにも、別の外務省ルートを使って雅子妃にアプローチをしているという話もあります」
もしかしたら、安倍首相のそうした目論見はすでに成功しつつあるのかもしれない。今月21日には、23日の皇太子の誕生日に際した記者会見が東宮御所で行われたが、そこで記者から「大嘗祭のあり方」について質問を受けた皇太子は、「今回政府が決定をした内容について、私がこの場で何か述べることは控えたいと思います」とコメントを避けた。昨年、秋篠宮が「宗教色が強いものを国費で賄うことが適当かどうか
「身の丈にあった儀式にすればよいと思う」と踏み込んだ発言を行ったのとは対照的だ。皇室ジャーナリストがさらに続ける。
「秋篠宮殿下の発言は天皇陛下の意向を代弁したものでした。皇太子殿下が立場上、明言できないのはわかりますが、婉曲的な表現さえなかったというのは、安倍政権のアプローチが効いているのかもしれません。いずれにしても、官邸は今後も、皇太子殿下への働きかけを強めていくでしょう。とくに雅子妃に狙いを定めてくる可能性が高い。もともと、雅子妃は結婚の際『皇室外交をしていただく』と説得されたといわれます。これから官邸が、そうした雅子妃の自己実現を材料にして、皇太子殿下をコントロールしようとするかもしれない。一方で、秋篠宮殿下は陛下の意志を継承しようとする。安倍政権がご兄弟の対立をつくりだす構図になるかもしれません」(前出・ベテラン皇室ジャーナリスト)
いずれにしても、安倍首相は、平和主義や護憲の立場を示す明仁天皇の在位が終わり、新たな天皇を即位させるときに一気に動いてくるだろう。引き続き注視する必要がある。
(編集部)
最終更新:2019.02.24 03:11