これは、「平和」「護憲」というメッセージ自体が「政治的」「危険思想」扱いをされる現状とそっくりだ。現に、そうしたなかで「憲法9条を守ろう」と集会を開こうとしただけで公共施設が「政治的な主張の集会には会場は貸せない」などと拒否する事例が次々に起こっているが、これと同様に、県民投票の実施を求めたり、新基地建設工事に疑義を呈するという、当然守られるべき市民の意志表示が「危険思想」だと見なされつつあるのだ。
そして、そうした空気を醸成してきたのは、言うまでもなく安倍政権だ。辺野古に新基地をつくっても普天間飛行場は返還されないというのに「普天間の危険性を除去するため」と大嘘をつきつづけ、他方、基地に反対する市民を安倍応援団たちはこぞって「暴徒」扱いしてきた。
その上、公正なプロセスを踏み、民主主義に則って実施される県民投票に対してまでも、安倍自民党は露骨な横やりを入れた。
たとえば、自民党の宮崎政久衆院議員が沖縄の市議会議員らに〈県民投票の不適切さを訴えて、予算案を否決することに全力を尽くすべきである〉などと予算案を否決する呼びかけをおこなっていたことが発覚。一時は宜野湾市、沖縄市、うるま市、石垣市、宮古島市の5市が不参加を表明する事態に陥った。
全県実施を求め元山仁士郎・県民投票の会代表がハンガーストライキしたことなどが実り、結果的に投票の選択肢を「賛成」「反対」の2択ではなく「どちらでもない」をくわえた3択で妥結、全県で実施されることとなったが、そこまで追い込まれることになった一部不参加問題の背景には官邸の暗躍があったとみられている。事実、宮崎議員が県民投票の予算否決の呼びかけに邁進していた最中の昨年12月10日、宮崎議員は松川正則・宜野湾市長と連れ立って首相官邸を訪れ、菅義偉官房長官と面談をおこなっていた(詳しくは既報参照→https://lite-ra.com/2019/01/post-4499.html)。
陰に陽に県民を「分断」し、民主主義の原理原則である国民主権さえ否定しようとした安倍政権。しかも、菅官房長官は県民投票を控えた今月14日の定例会見で、「どういう結果でも移設を進めるか」という質問に「基本的にはそういう考えだ」と明言。投票がおこなわれる前から、県民の意志表示は無視する、と宣言したのだ。
こうしたなかで起こったカジワラさんの入管“拘束”問題は、安倍政権の沖縄に対する強権性を象徴する事件と言えるだろう。
その後、辺野古を訪れたカジワラさんは「日米政府は沖縄県民の意思を無視して工事を進めていることが(日本国外で)分かっている。辺野古の問題は国際問題。ウチナーンチュの人権を守るため、国連へ働き掛けていきたい」と語るなど、沖縄県民にエールを送った(琉球新報22日付)。
県民無視の強権的な政府の姿勢に、24日の県民投票でははっきりと民意を叩きつけてほしいと願わずにはいられない。
(編集部)
最終更新:2019.02.23 09:15