しかも、安倍首相は続けて、こうまくしたてた。
「住民基本台帳法に基づく閲覧は文字通り、見るだけ。そこに見に行って、写しの交付はこれ、おこなわれません。写しの交付はおこなわれない。複写もできませんから、膨大な情報を自衛隊員が手書きで書き写しているということであります。これも含めてですね、きょうの報道は一部、私はそういう意味では誤りだろうと、こう思うわけでございますよ? それも協力を得ているということで勘定されてしまってますから、あの報道は誤り。あの報道は誤りであります」
「6割以上の自治体において協力を得られていないというのが真実、ファクトであります」
紙や電子媒体で提出せず、閲覧だけなんてけしからん。そんなものは「協力」とは言わない! ……安倍首相はそうキレたのだ。
失踪した外国人技能実習生の聴取票の問題では「プライバシー保護」を盾にしてコピーを禁じ、野党議員に一枚一枚手書きを強要したくせに、今度はプライバシー保護などまるで無視して紙や電子媒体で提供しない自治体を“非国民”であるかのように糾弾するとは──。
だいたい、自治体からの情報提供の根拠としている自衛隊法施行令には「紙媒体または電子媒体で提供すること」などとは書かれておらず、法学者の園田寿・甲南大学法科大学院教授も「自衛官募集のために住民基本台帳の情報を自治体が紙などで提供するのは法的根拠がない。住民基本台帳法で禁止する『個人情報の目的外利用』にあたり、違法だ」「個人情報を扱う規定は同(自衛隊)法にも施行令にもなく、これらを根拠に提供を求めるのは拡大解釈だ」と指摘している(朝日新聞2016年3月22日付)。このように、自衛隊が自治体に名簿の提供を迫ることに対しては個人情報保護上の問題を指摘する専門家は多いが、安倍首相はそうした指摘にはまったく目を向けないのである。
しかも、昨日の国会ではテレビ中継が入っていなかったせいか、安倍首相はこのあとヒステリーを全開にした。