さらに安保法制に関しては、自衛隊制服組トップである河野克俊統合幕僚長が、2014年衆院選直後に訪米した同年12月の時点で、米陸軍のオディエルノ参謀総長に対して「与党の勝利により来年夏までには終了するものと考えている」などと説明していたことが、国会で暴露された会談記録から明らかになっている。
いや、そもそも日本の安全保障政策のことごとくが、アメリカの要請に従って行われてきたことは、もはや公然の秘密だ。たとえば、ジャパンハンドラーの代表格、リチャード・アーミテージ元米国務副長官とジョセフ・ナイ元米国防次官補(ハーバード大学教授)らが書いた日本の安全保障政策などに対する提言「アーミテージ・ナイ リポート」を見ても明らかだろう。
2012年の「第3次アーミテージ・ナイ リポート」では〈平時から戦争まで、米軍と自衛隊が全面協力するための法制化を行うべきだ〉とされており、これが一連の安保法制につながったことは間違いない。以下、あらためて報告書に書かれた“対日要求”の一部を列挙しておこう。
〈集団的自衛権の禁止は日米同盟の障害だ〉
〈日米同盟は、中国の再興に対応するための能力とポリシーを構築しなければならない〉
〈イランがホルムズ海峡を封鎖するとほのめかしたら、自衛隊は掃海艇を派遣すべきだ〉
〈航行の自由を保障するため、米軍と協力して南シナ海の監視を増やすべきだ〉
〈他国のPKO要員や部隊を防護できるよう、法的権限の範囲を拡大すべきだ〉
〈日米間の機密情報を保護するため、防衛省の法的能力を向上させるべきだ〉
〈日本の防衛技術の輸出が米国の防衛産業にとって脅威となる時代ではなくなった〉
〈原子力発電の慎重な再開が正しく責任ある第一歩だ〉
〈日本のTPP参加は米国の戦略目標だ〉
安全保障関係だけでなく、原発再稼働からTPPまで、さらに言えば「女性活躍推進法」についても同報告書に〈女性の職場進出が増大すれば、日本のGDPは著しく成長する〉と書いてある。以後、安倍政権は特定秘密保護法や安保関連法、女性活躍推進法を成立させ、武器輸出三原則の緩和や集団的自衛権行使容認などを次々と閣議決定していったことは周知の通りだ。つまり、安倍政権の政策は、すべてこの報告書の“指令”に従ったものだったのである。
「アーミテージ・ナイ レポート」は昨年10月に第4弾が発表されている。この第4次レポートでは、日米の基地共同運用の拡大、日米による共同統合任務部隊の創設、共同作戦計画の策定、GDP1%以上の防衛費の支出などが求められていた。周知の通り、すでに安倍政権は毎年過去最高の防衛費を更新しているが、今後も、米国の要請どおりに日米の軍事一体化を進めていくのは火を見るより明らかだ。
その意味でもやはり、今回、防衛省の事務次官が“日本とアメリカが同じ国になればいい”という考えに言及したことを、たんなる妄言として片付けるべきではないだろう。高橋次官は「日本を米西海岸沖に移したい」などと軽口を叩いているが、実際には、この国の安全保障をめぐる基本方針はとっくのとうに太平洋の向こう側へ持っていかれている。これ以上、国民がなめられないためにも、通常国会で徹底して追及されるべきだ。
(編集部)
最終更新:2019.01.29 09:22