④ 「パワハラ裁判中のパワハラ」の慰謝料・弁護士費用:22万円
信じがたいことに、パワハラ裁判中、会社は、Aさんの自宅や親族の家に、Aさんを誹謗中傷する手紙を送りつけてきた。Aさんは手紙を読んで、過呼吸の発作を起こした。
判決は、この「パワハラ裁判中のパワハラ」を次のように断じて、会社と社長に対し、慰謝料20万円、弁護士費用2万円の支払を命じた。判決文を読めば、いかに酷い手紙だったかがわかるだろう。
「手紙は、直接原告に宛てて、『被告Sのマインドコントロール下にあった精神状態で、私ども会社のお客様からの大事な業務をしていたのかと思うと、ぞっとします』などと、被告Sのパワハラを受けつつ業務をしたことを原告の落ち度であるかのように問題をすり替えて原告を非難したり、『貴殿のことを思いやってからの行動であるにも関わらず、貴殿は裁判に訴えるという暴挙にでました』『社会通念上、会社の社員がとる行動か全く理解できません』『復職したいという人間が、会社のことを誹誘中傷するなど、当然許されない愚行』『貴殿は今回の件を…などと理解不能な主張をしていますが、入社2、3年の人間の言動として余りあるものです』『もういい加減にこの問題に自分なりに決着をつけ、今後の貴殿の5年後、10年後、20年後の人生を前進的なものにしていただきたい』などと、全体として、原告が自らのパワハラ被害を訴えて会社を批判し、本件訴訟で係争すること自体が非常識で分をわきまえない行為であるであるかのように原告を見下して一方的に非難し、貶めたりするものであって、これらの文書を送付する行為は、原告の名誉感情を侵害する違法な侮辱行為に当たり、不法行為を構成する。」
⑤ 総額:2048万円
以上で、総額2048万円。これが、「パワハラで2000万円支払命令」の判決の金額の中身である。労働者1人を軽く見て不当な取扱いをすれば、いかに高くつくか、今回の会社はよく学んだであろう。
しかも③の給料は、会社が支払わない限り、今後もずっと増え続ける。また、この2000万円以上の金額の全部に、年5~6%の遅延損害金(利息のようなもの)も付く。この判決によって、抵抗すればするほど不利益を受けるのは会社側となった。Aさんの長い裁判闘争の結果、その努力と執念が実り、裁判所が最後に「正義」を示すに至ったのである。
マスコミからよく質問されるのが、Aさんが勝訴した要因である。Aさんは、働いていた当時、上司Sから人格を否定されるような叱責を受けても、「仕事ができない自分自身が悪い」と思い込み、涙を流して謝っていた。それが「パワハラだったのでは」と気づいたのは、休職した後である。そのため、パワハラの録音は一切残っていなかったし、当時の日記やメモもなかった。では、どうしたか。