しかも、りゅうちぇるは上から目線でわかったように語ることはしない。
たとえば、この日も同性カップルを紹介するときと異性カップルを紹介するときで微妙にニュアンスが違ってしまうことなどを挙げ、「やっぱり当たり前じゃないっていう雰囲気がたまに出ちゃうときがどうしてもあるんですよね。そのときは、やっぱり本人たちは息苦しい世の中なんだろうなって考えるときはあります」と自身の言動をもかえりみ、性的マイノリティが感じているであろう目には見えない不自由さを思いやる。“I have black friends”論法で「ゲイの友人がいる」「レズビアンの友人がいる」と言いながら性的マイノリティ差別を垂れ流す差別主義者とは対照的だ。
異なる価値観を受け入れるにはどうしたらいいかと有働キャスターに問われたりゅうちぇるはこう答えた。
「正直、『理解』とかにまではいかないこともあると思うんですね。でも、認める、理解はできなくても認め合う、お互いの存在や、お互いの生き方、お互いの個性を認め合うっていうのは、誰でもいまからできることだと思うんですね。なので、ちょっと考え方、気持ち、思い方の違いで、明日から人への考え方、自分の生き方も変わってくるんじゃないかなと思います」
「お互いの存在や、お互いの生き方、お互いの個性を認め合う」こと。たとえ、「理解」できないことであろうとも、お互いがアイデンティティを「認め合う」ように努めること──。
りゅうちぇるが社会に向けて発信しているメッセージはずっと一貫している。個人を大切にすること。それだけだ。
しかし同調圧力が強く、「国家のため」「伝統だから」「男だから」「女だから」「日本人だから」という主張が跋扈し「個人」が抑圧される現在の日本社会で、こうしたメッセージをりゅうちぇるのような影響力のあるタレントが積極的に発信し続けることは非常に貴重なことだ。これからもりゅうちぇるの活動に期待したい。
(編集部)
最終更新:2018.12.26 12:31