不正を擁護した柴山文科相(文科省HPより)
東京医科大学「女性差別」入試問題につづき、順天堂大学が仰天の“差別の正当化”をおこなった。昨日、順天堂大が会見を開き、医学部の入学試験において男女で異なる合格ラインを設けていたことについて、開きなおったように、こう説明したからだ。
「女子のほうが精神的な成熟が男子より早く、コミュニケーション能力が高い。ある意味で、男子を救うためだった」
「差別ではなく、男女間の差の補正と考えていた」
順天堂大では、出願者の半分近くにのぼる「一般A方式」の1次試験で女子や浪人回数の多い男子が2次試験に進むのが難しくなる合格基準を設け、さらに2次試験の4方式では、小論文・面接試験の点数(最高5.4〜5.65点)で、男子は女子より0.5点高くつけていた。この理由について、順天堂大は「女子のほうが精神的な成熟が早く、相対的にコミュニケーション能力が高い傾向がある」とし、新井一学長は「20歳を過ぎると差がなくなるというデータもあり、男子学生を救うという発想で補正した」と述べたのである。
受験時は女子のほうがコミュ力が高いという「傾向」があるが、20歳を過ぎるとコミュ力の男女差がなくなるという「データ」があるから、面接試験では男に0.5点差をつける「補正」をした──。よくもまあ、こんなあからさまな差別を、「差別ではない」などと言い切ったものだ。
そもそも、「女子のほうが精神的な成熟が男子より早く、コミュニケーション能力が高い」などという「傾向」は、けっして個別の受験生に当てはまるものではない。それを“そのうち男子もコミュ力が上がる”という「データ」を理由にして一律に男子に下駄を履かせていたとは……。こんな屁理屈がまかり通るなら、「来年になればもっと頭が良くなっている」という理由でも加点できてしまう。
つまり、この「コミュ力」というのは、体よく女子を振り落とすための方便でしかない。実際、女子の合格を抑え込んだ理由として、順天堂大の代田浩之・医学部長は「女子寮の収容人数が少なかった」とも挙げたが、2017年に新たな女子寮が完成したあとも合格抑制はつづいたからだ。
社会では「女の子は気遣いができて当たり前」などと押し付けられ、公平にジャッジされるべき入試では、女子をふるい落とすために「女子はコミュ力が高いから」と難癖をつけられ、男子より減点されてしまう──。一体、どこの地獄の話かというものが、平然とおこなわれつづけてきたのである。
しかし、これだけの大問題発言が飛び出したというのに、文科省の対応は鈍い。東京医大の「女性差別」入試問題が問題となって以降、文科省は医学部医学科のある81大学の調査をおこない、不適切な入試がおこなわれた可能性のある大学がほかにもあることが判明したというのに、そうした大学の名前を公表しようとしていない。
公平に与えられるべき学ぶ機会が性差別によって阻害されていたという深刻な重大事件に対し、この消極的態度──。その上、柴山昌彦文科相は、東京医大問題で信じられないようなツイートをおこなったのだ。