なかでも、見城社長はいつも以上に大きな声で、こんな絶賛とヨイショを繰り返していた。
「日本国紀を読んでないと、今の日本をどう生きるかってことがわからないと思う。本当に!」
「(百田さんは)すっごく教養があってエンターテナー」
「私たちは何者でいまここに立っているのかってことが、これを読むと、もう全部わかるよね。そんな歴史書はなかったですよ」
「しかも作家がいち歴史の場面や一時代の人物をとって書くことはあったけども、こんなにちゃんと通史として書いたってこともないですよ。空前絶後ですよ」
「独断と偏見では何一つ書いてない」
「(百田さんも自分で)こんな本がよく書けたなって思うでしょ?」
相当な読書量を誇っているはずの見城社長が、例の「Wikipediaコピペ疑惑」まで浮上した『日本国紀』を本気で「空前絶後」だと思っているのだとしたら、ちょっと苦笑いである。
もっとも、番組では途中、見城社長が“サイレント修正”に触れるシーンもあった。“刊行前に百田氏がゲラを何度も直してきた”というエピソードを語るのだが、そこで「ただ、刷りが変わるごと、増し刷りするごとにいくつか直してんだろ?」と振った。これに高部氏は「はい、細かく直しています」と苦笑いし、百田センセイも小さな声で「また直すんです、はい」。
ようするに、これだけで“サイレント修正”の禊を済ませてしまおうという腹づもりなのだろうか。ほんとうにこれが、一流作家の作品を出版している出版社の姿勢なのかと首をひねりたくなる。
とはいえ、百田尚樹&幻冬舎といえば、例の『殉愛』を送り出したコンビだ。本サイトでもレポートしてきたように、『殉愛』をめぐっては「ノンフィクション」を謳っておきながら数々の嘘やデタラメ、捏造が発覚。周知のように、やしきたかじん氏の長女から訴えられた裁判は敗訴が確定、たかじん氏の元マネージャー・K氏が起こした名誉毀損訴訟でも東京地裁判決(11月28日)で百田氏と幻冬舎に賠償命令が下されるなど、連戦連敗の状況にある。
しかし、幻冬舎はたかじん氏の長女に敗訴した昨年12月以降も、百田氏の著書を出版し続け、その製造責任をまったく説明してこなかった。そして今回、「幻冬舎創立25周年記念出版」と銘打ち、大々的な広告を打って『日本国紀』を刊行したわけである。ようするに、見城社長は一連の『殉愛』事件で懲りるどころか、むしろ、なんの痛痒も感じていないということだろう。
ただ、幻冬舎・見城社長が百田センセイの日本通史を出版したのは、「百田の本は売れる」という商売上の皮算用だけが理由ではないかもしれない。今回、見城社長と有本氏が前述『徹の部屋』で明かしたところによれば、『日本国紀』を幻冬舎から出すことになったのは、昨年、同番組に安倍首相が生出演したときのことがきっかけだったという。